再生医療はこれまでなかった新しい治療法。それだけに、本当に効果があるのか、重大な副作用などはないのかなど、心配になるのもごもっともです。そこで、その不安をぬぐい去る、きちんとしたエビデンス(証拠)の数々をご覧いただきましょう。
国内外で研究や調査がなされ、有益と判断できるデータはとてもたくさん存在します。今回は、その中からいくつかをピックアップ! 安心材料としてご紹介します。再生医療に期待しつつも、少し疑っていた人はぜひご覧ください。
痛みが大幅に改善
変形性膝関節症などの慢性的な疾患でもっとも大きな悩みの種となるのが、ひざの痛みではないでしょうか。まずはこの痛みへの効果に対する裏付けデータをご覧いただきましょう。
例1 培養幹細胞治療の場合
こちらのグラフをご覧ください。
これは、痛みの度合いを数値化してグラフにしたものです。時間とともに数値が下がっていることが見て取れます。脂肪幹細胞を培養して関節内に注入する治療データで、培養数に差をつけて比較検証。Lowは低用量群、Highは高用量群というわけですね。
どれも数値は下がっていますが、特に低用量群で統計学的にも有意な改善が見られたと報告されています。
例2 培養しない幹細胞治療の場合
脂肪を活用した幹細胞治療は、培養のものと非培養(幹細胞を含む細胞群)のものが存在します。非培養のものも、治療後に痛みのスコアが下がった(痛みが改善された)例が報告されています。それがこちら。
痛みや鎮痛剤の量、関節の硬さなど、治療成績に関係する5つの指標の平均値をグラフ化したOAスコアというもので、視覚的に良くなったということが感じとれますね。
例3 血液を使った治療法の場合
血液を活用した再生医療は、多くのスポーツ選手がけがの治療に取り入れていることで広く知られています。PRP療法なんかが代表的ですよね。そんな血液療法も、きちんとしたエビデンスのもと提供されています。その一種とも言えるAPS治療※では次のような結果が報告されています。
このグラフは、関節内に生理食塩水を投与した患者とAPSを投与した患者の、痛みの度合いを数値化して比較したものです。生理食塩水は投与から3ヵ月ほどで痛みがぶりかえしていることが分かりますが、APS治療では長期間にわたり痛みが軽減し続けていることが分かります。
※APS治療:血液中に含まれる炎症を抑えるタンパク質と、細胞分裂を活性化して自然治癒の反応を促進させる成長因子を濃縮し、患部に注入するという治療法。
他にも再生医療にはこんな効果が確認されています
再生医療の効果は、痛みの改善だけではありません。次のような効果も認められています。
炎症を抑える効果
痛みの元凶とも言える炎症。変形性膝関節症でも滑膜の炎症がひざの痛みを引き起こしています。幹細胞治療や血液療法などの再生医療には、この炎症を抑える効果が認められています。例えばこちら。
変形性膝関節症のマウスに幹細胞治療を施したところ、炎症に関係するタンパク質の一種(IL-1β)が、投与14日後には低減していることが示されています。また、42日後には滑膜の肥厚の減少も確認されました。
軟骨の変化を抑え、保護する作用
上記のマウス実験では軟骨損傷スコアの改善が見られますが、ヒトにおいても幹細胞の投与によって軟骨を保護する作用は認められています。具体的には、線維化を抑える作用を担う成長因子HGFの分泌促進と、線維化を進める成長因子のTGF-β1の低減が観察されたということで、これによりヒトの軟骨細胞に対しても、抗線維化および抗肥大効果が示されました。
【参考文献】「Adipose mesenchymal stem cells protect chondrocytes from degeneration associated with osteoarthritis」Maumus et al./Stem Cell Research (2013) 11, 834-844
軟骨の再生を期待する症例も
軟骨の保護は幹細胞治療の効果のひとつにあげることができますが、軟骨の再生についてはいまだ信頼におけるほどの報告はありません。ただ、それを期待してしまうような症例が、ごくわずかではありますが存在します。
例えばこちら。関節腔の広がりや、軟骨が滑らかになっていることが見て取れるかと思います。
再生医療の効果の裏付けは今も増加中!
今こうしている間にも、国内外のどこかで再生医療の研究や治療が行われています。国内でも再生医療等安全性確保法という、再生医療法案が施行されてから、一定の質を担保した再生医療の提供が増加中。信頼のおける報告が、今後もどんどん出てくることでしょう。また新しい情報が入りましたら、随時、ひざ痛チャンネルでもご報告します。お楽しみに!