ひざ痛チャンネル編集部

年齢は問題?人工膝関節置換術を決断する前に考えたい1つの選択肢

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年齢は問題?人工膝関節置換術を決断する前に考えたい1つの選択肢

人工膝関節置換術を勧められたけど「60代で手術を受けて大丈夫?」「70代は?」「80代だと高齢すぎる?」と迷っていませんか? 人工膝関節置換術は大がかりな手術のため、様々な不安要素があると思います。中でも年齢と特に深い関係にあるのが、リハビリや人工関節の入れ替え手術への不安と言えるでしょう。

そういったことがもし少しでも気になる方は、この記事をご覧ください。年代別にどんな経過をたどるのか予測しつつ、デメリットの回避法までご紹介します。最後まで読んでいただけたら「今この年齢で手術するorしない」だけでなく、先を見据えた治療を考えられるはずです。

 

人工膝関節置換術を年齢で考えると……

人工膝関節置換術を年齢別に分析する前に、まずはどんな年齢の人が多く手術を受けているのか、見てみましょう。

人工膝関節置換術の初回手術の年齢

【出典】日本人工関節学会

日本人工関節学会が2017年に発表した統計によると、人工膝関節置換術は70代に最も多く行われているということが分かります。中には40代という若年で手術を受けた人や、90歳を超えてから初めて手術を決心したという人も。こうしたデータは指標として見ることはできますが、ベストな手術時期を示すものではありません。と言うのも、年齢層が違えば、メリットやデメリットが違ってくるから。膝の状態にそういったものも合わせて考え、手術を決断することになるのです。

そこで、もしもあなたの年齢で膝に人工関節を入れたら、どんな経過が考えられるのか、予測してみました。個人の膝の状態や体力によっても異なるためあくまで目安ですが、一定の手術数がカウントされている40代〜90代を3つに大別して、大まかな特徴をご紹介します。

 

40代〜50代での人工膝関節置換術

40代から50代にかけて手術件数が少し増えていますが、基本的にこの年代で人工膝関節置換術を受ける人はそれほど多くありません。

40〜50代で手術を受けるメリット・デメリット

この年代が手術を受けるのには、若さゆえにメリットがあります。それは体力と回復力が高いこと。リハビリの負担は軽く、術後経過も比較的、スムーズであると考えられます。

人工関節の性能が上がり、耐用年数が延びてきています。しかし、その耐用年数をまっとうした場合、人工関節の入れ替え(再置換)手術を行わなければなりません。人工関節の耐用年数については、後に詳しく解説しています。

 

60代〜70代での人工膝関節置換術

人工膝関節置換術の手術件数は60代から大幅に増加。日本における人工関節置換術の適応は一般的に「60代以上が望ましい」という風潮が強く、日本人工関節学会の発表した上記のグラフでも、手術件数が最も多いのは70代となっています。

60〜70代で手術を受けるメリット・デメリット

体力を考えても、60〜70代で手術を受けることに大きな問題はないでしょう。リハビリも努力は必要ですが、まだ不安視する年齢ではないと考えます。ただ、平均寿命を考えると、再置換のリスクは十分に考えられます。70代だと一回の手術で済むのでは? と思われるかもしれませんが、再置換の原因は何も耐用年数を過ぎることによる不具合だけではありません。再置換の原因についても後に詳しくお話しますが、70代でも二度目の手術となる可能性は十分に考えられるのです。

 

80代以上での人工膝関節置換術

人工膝関節置換術の手術件数で、70代に次いで多いのが80代。90代でも人工膝関節置換術を受けている人はおり、40代よりも若干多いという数値が出ています。高齢になるほど術後の回復までにかかる期間は長くなるのでは? と不安かもしれませんが、人工関節置換術において重要なのが、術後のリハビリ。意欲さえあれば、高齢でも手術を受けることは可能なのです。

80代〜90代で手術を受けるメリット・デメリット

現在の日本の平均寿命が80代であることを考えると、その後の人生において人工関節を再置換することになる可能性は低いと言えるでしょう。ただ高齢であることから、手術やリハビリに際して体力的な問題が生じるケースは増えることが考えられます。そのため、先にもお話したように「意欲」というところがポイントとなるのです。

 

人工膝関節置換術にある「再置換」のリスク

人工膝関節置換術と年齢との関係を考える中でどの年代でもデメリットとして挙げられるのが「再置換」。医師が年齢をひとつの指標にするのも、再置換を避ける意図があります。なぜ再置換がそれほど懸念点となるのでしょうか。再置換を引き起こす原因を確認した上で、なぜ避けるべきなのかをお話します。

 

人工膝関節の再置換を引き起こす原因

膝の人工関節で再置換が必要となるのは、どのようなときなのでしょうか。

人工膝関節再置換の原因

【出典】日本人工関節学会

人工関節の耐用年数によるもの

人工関節には耐用年数(寿命)があります。現在は性能が非常に良くなったこともあり、人工関節の耐用年数は15〜20年。それ以上使い続けられることも少なくありません。この年数を過ぎ、摩耗するなどした場合、人工関節を再置換することになります。

人工膝関節に起きるトラブル

感染やゆるみ、摩耗などが原因となることがあります。感染とは、人工関節が細菌などに侵されてしまうこと。手術で切開した部分から感染することもありますが、内科的な要因で細菌感染を起こすケースもあります。また、ゆるみとは、人工関節が骨にしっかり固定されておらず、ぐらついている状態。人工関節を使っているうちに摩耗(すり減ること)したり、衝撃によって脱臼したりすることで生じます。

こうしたトラブルが起こると、人工関節の耐用年数に満たない場合でも、再置換が必要になることがあります。

 

なぜ医師は、人工関節の再置換を避けたいと考えるのか

再置換は手術が複雑になり、術後のリスクも増大します。これこそ、再置換を避けたいと医師が考える理由です。

人工関節にゆるみが生じたケースを考えてみましょう。ゆるみと言っても、多くの場合は一部分だけで、人工関節のほとんどの部分は骨と完全に密着している状態。それを骨ごと削り取って、欠損部分に骨移植をしたり新たに削ったりして整え、新たに人工関節を入れ直すことになるのです。このような状況では、術中に手法のアレンジをしなければなりません。そのため手術時間が長くなる傾向があり、そのぶん空気中の細菌落下による感染の可能性が高くなります。また、手術時間が長くなることは、止血(タニケット)をする時間も長いということ。これは血栓症のリスクを増大させる大きな原因となります。

このように、様々なリスクが増大してしまうのが再置換。可能な限り避けるべきと言えるでしょう。

 

人工関節の再置換と年齢との関係

年代別に人工膝関節置換術を分けて見てきましたが、実際のところ、再置換率との関係はどうなのでしょうか? もう少し深く見ていきましょう。

 

60代前半で手術した場合、再置換の可能性は20%!?

こちらのデータは、人工膝関節の再置換手術の割合を、初回に手術した年齢別に表したものです。

膝の人工関節の入れ替え率

これは海外のデータで、人工膝関節全置換術を受けた患者54,276名の再置換率を20年間、追跡調査した結果です。

40〜50代では再置換の可能性が高くなると予測しましたが、ここにその事実があります。50代前半に初めて人工膝関節置換術を受けた女性の20%、男性ではなんと35%が実際に再置換手術を受けていることがお分かりいただけるでしょう。つまり、年齢が若いほど、再置換となる可能性は高くなるのです。少し年齢が上がっても再置換率は依然として高く、60代前半ではおよそ20%。70代前半になっても5〜10%が再置換をしていることを示しています。

繰り返しになりますが、これは海外のデータ。平均寿命が世界最高とも言われる日本では、再置換率がさらに高くなる可能性も考えられます。

【参考文献】「The effect of patient age at intervention on risk of implant revision after total replacement of the hip or knee: a population-based cohort study.」Bayliss LE.他 Lancet. 2017 Apr 8

 

人の平均寿命も人工関節の再置換の可能性と大きく関係

日本は世界有数の長寿国。その平均寿命が人工関節の再置換に大きく関係しています。

日本人の平均寿命

【出典】内閣府

 

100歳以上の高齢者の人口

【出典】厚生労働省

こちらのグラフは、内閣府が発表した平均寿命の実績値と推計データ。日本人の現在の平均寿命は83歳程度で、今後もさらに延びると予測されています。また、100歳まで生きている人の数も増加しており、2010年時点で、なんと30年前の50倍。「人生、100年」とも言われるなど、長寿が当たり前の時代となってきたのです。

こうしたデータと、15年〜20年と言われる人工関節の耐用年数を合わせて考えると、40代〜50代は言うまでもなく、60代〜70代での人工膝関節置換術も「早すぎる」と感じる人がいるのではないでしょうか?

 

人工膝関節置換術の入れ替えを回避する方法

手術を受ければ、いま悩みの種となっている膝の痛みから解放され、QOL(生活の質)向上も望めるでしょう。しかし、再置換への懸念は残ったまま。何もせずただ再置換の可能性が低くなる年齢を待つのでは、今の人生をを楽しむことはできません。そこで手術を選択するのも一つの手段ですが、近年、もう一つの選択肢ができていることをご存知でしょうか?

その新しい選択肢が、再生医療。PRP療法や幹細胞治療などの名称を耳にしたことがある、という方もいらっしゃるかもしれませんね。膝ではありませんが、野球の大谷翔平選手が肘の靭帯を損傷した際に再生医療を選択したのが記憶に新しいところ。手術を回避し早期復帰するため、PRP療法や幹細胞注射を受けました。

 

従来の保存療法との違いは?

まだ手術をしないことを選択した場合、これまでは一般的な保存療法を続けるしかありませんでした。しかし従来の保存療法は、痛みを一時的に抑えることが主な目的。内服薬やヒアルロン酸注射を繰り返しますが、手術の検討まで至っているということは、そうした治療が効かなくなっているという人がほとんどでは?

従来の保存療法

一方、PRP療法や幹細胞治療といった膝の再生医療は、高い抗炎症作用や組織の修復を促進させる作用が確認されていて、痛みを始めとする諸症状の緩和、うまくいけば病状の進行を緩和させることも期待できるのです。そのためヒアルロン酸注射や内服薬といった治療と、手術との間を埋める新しい選択肢として認知されつつあります。

膝の再生医療について、より詳しい治療法や効果は「【変形性膝関節症3つの最新治療】患者が語る再生医療の効果とは?」でご紹介しています。

 

人工膝関節置換術を遅らせる=再置換を回避!

もし再生医療を受けることで症状の改善を図れたなら、今の年齢で人工関節にする必要はなくなります。つまり、その後に手術することになっても、再置換の可能性は大幅に減っているということ。さらに期待を込めて言えば、痛みが改善されることで、そのまま手術自体を回避できる可能性もゼロではないでしょう。

人工関節を勧められているということは、変形性膝関節症などの疾患がかなり進行した状態と考えられます。そのため楽観視はできないかもしれませんが、人工関節を膝に入れるという大掛かりな手術を1回限りにとどめるために、再生医療はとても有効な方法かもしれません。

 

【おまけコーナー】人工膝関節置換術ってどんな手術?

最後に、人工膝関節置換術がどんな手術なのか、おさらいしておきましょう。この手術には2つの手法があり、それぞれ単顆置換術、全置換術と呼ばれます。人工膝関節置換術は痛みの緩和ではなく、解消が期待できる手術です。

顆(か)とは、骨の末端にあるこぶ状の部位のこと。膝関節を形成している太ももの大腿骨(だいたいこつ)には、身体の内側と外側でそれぞれ内側顆(ないそくか)と外側顆(がいそくか)があります。

 

人工膝関節単顆置換術(UKA※)

損傷しているのが片方の顆のみの場合、次の条件を満たしていれば、人工膝関節単顆置換術(じんこうひざかんせつたんかちかんじゅつ)が検討されます。

  • 膝にある4つの靭帯(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯)が正常に機能している
  • 膝の曲げ伸ばしができる状態である
  • 膝関節が重度の変形(O脚、X脚)をしていない
  • 重度の肥満でない

片側の顆を人工関節に置き換えるため、自身の骨と人工関節とのバランスを取る必要があります。手術はやや複雑なものになりますが、片側の顆は自分の骨を温存できるのがメリットです。

所要時間は1時間半程度で、術後は3日ほどでリハビリを開始できます。入院期間は2週間程度が一般的です。
※Unicompartmental Knee Arthroplastyの略

人工膝単顆置換術

人工膝関節全置換術(TKA※)

先ほどご紹介した単顆置換術の適応条件を満たしていない、両方の顆を損傷している、といった場合には、人工膝関節全置換術(じんこうひざかんせつぜんちかんじゅつ)を行います。これは文字通り、膝関節全体を人工のものに置き換える手術です。

手術の所要時間は約2時間。術後、歩けるようになるためのリハビリに時間を要し、入院期間も1ヶ月ほどと長めになります。
※Total Knee Arthroplastyの略

人工膝関節全置換術

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