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膝の痛みのもっともポピュラーな治療法と言えば、膝関節へのヒアルロン酸注射。このコラムをご覧の皆さまの中で、定期的に注入しているという人も多いのではないでしょうか。でも、なぜこの治療法なのか、注射のことをちゃんと理解して受けていますか?
今からでも知っておくべき知識をまとめてみました。
ヒアルロン酸注射で膝痛が改善する理由
ヒアルロン酸注射を打つと、膝の痛みが和らぎます。それはなぜか。理由は、ヒアルロン酸が膝関節と切っても切れない関係にあるからです。女性なら美容のイメージが大きいかもしれませんね。確かに肌組織内もそうですが、関節の中を満たしている関節液と呼ばれる液体にも多く含まれています。そのおかげで私たちは、膝関節を痛みなくスムーズに動かすことができるのです。また、膝の軟骨を守る役割もあります。
膝の痛みの原因として特に多いのが、変形性膝関節症。この病気を発症している人は、膝関節内のヒアルロン酸が減少しているケースが多いと言われています。関節液に含まれるヒアルロン酸が炎症によって分解され、その濃度が低下してしまうのが原因。結果、膝関節の滑らかさや弾力が損なわれてしまい、骨と軟骨とがこすれ合うようになってしまうのです。その結果、炎症が起きて痛みが生じるというメカニズムです。
このような状態の膝関節に、注射という物理的な方法でヒアルロン酸を補充するのがこの治療法。関節液がクッションの働きを取り戻すため、膝の痛みが和らぐというわけです。
注射の流れ・頻度
一般的にヒアルロン酸注射は、整形外科の外来に通院して受けます。ベッドに横になり、膝の消毒後、関節内に注射します。膝に水がたまっている場合は、水を抜いてから注射します。およそ10分程度の短時間の治療です。初回は注射後、具合が悪くならないか15分ほど様子を見て、問題なければ治療終了。もし気分が悪くなったらすぐに医師に伝えましょう。
膝関節へのヒアルロン酸注射は、週1回の治療を3〜5週間ほど続け、効果に応じて2〜4週間に1回のペースで行うのが一般的です。保険診療の場合、週1回までというのが原則となります。
※この手順は一例です。病院によって異なることもあるので、基本的には医師の指示に従ってください。
ヒアルロン酸注射のメリット
この治療法は、医学的に効果が認められています。変形性膝関節症の治療効果を示す国内のガイドラインにも「推奨する」との文言が[1]。ヒアルロン酸注射の魅力としては、次のようなものがあげられます。
[1]独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)脊椎脊髄センター「変形性関節症治療の国内外のガイドライン」
①膝の痛みが和らぐ
不足したヒアルロン酸を直接補充する治療法なので、膝関節への負担は軽減され、注射直後から痛みが和らぎます。また、ヒアルロン酸には抗炎症作用があると言われており、それによっても痛みに対して効果が得られます。
②膝が滑らかに動く
膝関節の潤滑油とも言えるヒアルロン酸なので、注射することで膝関節内の動きも滑らかになり、動かしやすさを感じることができます。
③痛みが少ない
注射の痛みがどれほどか気にする人も多いかと思います。痛みの感度には個人差がありますが、一般的な針を刺す痛みと考えて良いでしょう。
④すぐ日常生活に戻れる
人工関節置換術などの大掛かりな外科手術と違い、ヒアルロン酸注射には入院の必要がありません。治療後の痛みも少ないので、いつもの生活にすぐ戻ることが可能です。
⑤副作用のリスクが低い
前述のように、ヒアルロン酸はもともと体内に存在する成分。そういった意味でアレルギーを起こしにくいというメリットがあります。
ヒアルロン酸注射のデメリット
安全で手軽な治療法ですが、ヒアルロン酸注射にはいくつかのマイナスポイントもあります。こちらもきちんと把握しておきましょう。
①効果が短期間
注射されたヒアルロン酸は体内に吸収されるため、疼痛緩和の効果はそれほど長く続きません。保険診療のヒアルロン酸注射の場合、1週間たたないうちに痛みが再発することもあります。
②定期的な通院が前提
効果の持続期間が短いため、頻回に通院の必要があります。一般的な整形外科の場合、その度に長い待ち時間を経て注射することに。たとえ注射自体は10分ほどで終わるとしても、病院に費やす時間はトータルするとかなりのものになると言えるでしょう。
③慢性的な膝痛には不向き
ヒアルロン酸注射は気軽な膝痛治療ではありますが、適応となるのは軽症の場合。初期の変形性膝関節症の膝痛緩和には効果を発揮しますが、症状が進行している膝関節では効き目がでないことがあります。
④失敗すると激痛
膝の関節内に注入するのがヒアルロン酸注射ですが、もし関節外に注入されると、かなりの激痛を伴います。気軽な治療法ではありますが、病院や医者選びで満足度は変わると言えるでしょう。ただ、このようなことは非常に稀です。
⑤膝関節の損傷は治らない
ヒアルロン酸注射の目的は、あくまで膝関節のクッション性や滑らかな動きをサポートすること。痛みは和らいでも、すでに負ったダメージが修復されるわけではありません。
ヒアルロン酸の種類
注射に使用されるヒアルロン酸薬剤の種類は様々。なかでも日本の保険診療で扱われているものは以下の3つになります。
アルツ
もっとも一般的なヒアルロン酸がこのアルツ。主に変形性膝関節症への効能が認められています(関節リウマチも一部適応)。1回2.5mLを週1回、連続して5週注射するのが一般的です。
スベニール
アルツ同様、国内でごく一般的に用いられる薬剤です。ヒアルロン酸の分子量が高く、従来が60〜120万なのに対し、スベニールには190〜250万というのが特徴。変形性膝関節症の他、慢性の関節リウマチにも効能が認められています。用法用量はアルツと同じです。
サイビスク
変形性膝関節症による膝の痛みの緩和が目的のサイビスクは、ヒアルロン酸含有量が2mLあたりに16mgと従来と比較して多め。少ない回数での長期持続が特徴です。週1回2mLを3週連続で注射することで、6ヶ月の効果が確認されています。
注射後に避けたいNG行動
入院や生活への支障がほとんどないヒアルロン酸注射ですが、それでも術後は少しだけ過ごし方に注意が必要です。そこで、注射後に控えたい日常行動をご紹介します。
注射当日の過ごし方
注射を終えた当日は激しい運動を避け、できるだけ穏やかに過ごしましょう。階段を何度も上り下りしたり、同じ姿勢で長時間いたりするのは避けるべき。また、注射した膝の付近は極力触らないようにして、清潔にしておくこと大切。マッサージも良くないことを覚えておきましょう。
注射後にやってはいけないこと
ヒアルロン酸注射後に、特に注意したいこと。それは、過度な運動をしないということです。よくありがちなのが、これまであった痛みがなく注射当日からなくなったことで、すぐに趣味の登山やスポーツなどの計画を立ててしまうケース。膝のストレスが解消されたのは嬉しいですが、早い段階での見切りは禁物です。ヒアルロン酸注射では連続して3〜5週は治療を行うはずなので、治療が続いているうちは激しい運動はしないで、膝をいたわりましょう。
ただし、安静にし過ぎるのも考えもの。関節が硬くなって動きにくくなってしまいます。膝に強いダメージが加わらない範囲で、適度に動かすことも大切です。簡単なリハビリなどのアドバイスを病院からもらうのもいいでしょう。
治療法についてしっかり知った上で選択を
変形性膝関節症の治療では、まずヒアルロン酸注射を提案されるケースが少なくありません。一般診療で医師の勧めを疑ったり断ったりする人はほとんどいないでしょうが、痛んでいるのは自分の膝です。効果がなかったり、違和感を覚えたりした場合には、遠慮せずに医師に相談しましょう。セカンドオピニオンを利用するのもひとつの手段です。
適応をしっかり見極めれば、ヒアルロン酸注射が膝痛の緩和に効果的なことは事実。その本来の効果を得るためにも、この記事でご紹介したような基本知識が役立てばと考えています。
また、近年では変形性膝関節症の注射に新しい選択肢も登場していますので、参考にしてみてください。