ひざ痛チャンネル編集部
2018-07-19

人工関節センターの長所は?手術する病院の選び方を膝ドクターが伝授

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人工関節センターの長所は?手術する病院の選び方を膝ドクターが伝授

この記事を読んでいるあなたは、主治医から膝の手術を勧められ、人工関節センターを紹介された方でしょうか? あるいは、膝の痛みに堪え兼ねて人工関節センターを受診するか迷っている方でしょうか? もちろん、人工関節センターで治療を受けるメリットはあります。ただ留意しておくべきなのが、人工関節センターでしか良い治療を受けられないわけではない、ということ。

この記事では、人工関節センターがどういった施設か、メリットを解説した上で、近くに人工関節センターがない場合などに知っておくとためになる、手術を受ける病院選びのポイントもご紹介します。「より専門性の高いところで安心して治療を受けたい」という思いは誰しも同じ。手術に前向きになれる情報がここにあります。

 

人工関節センターとは

膝の人工関節置換術人工関節センターとは、人工関節を扱う手術を専門とする施設のこと。単体の病院として存在する他、病院内に一つの部門として設けられていることもあります。

近年、医療業界全体が、人工関節置による手術の品質向上に注力しています。専門性の高い治療を提供し患者の生活の質(QOL※)を上げることを目的として、多くの人工関節センターを設立されました。なぜ「人工関節センター」という名称まで用いて、専門の施設を設立する動きが出てきたのでしょうか。そこには、2つの背景があります。
※Quality of lifeの略語

 

人工関節の手術が必要となる疾患を持つ人が増えている

一つ目に、変形性膝関節症や関節リウマチなど、人工関節の手術が必要となる病気の罹患率が上がってきていることが挙げられます。例えば変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減る進行性の疾患です。末期になると、太ももの大腿骨(だいたいこつ)とすねの脛骨(けいこつ)がぶつかり合って膝が変形。激痛に襲われ、日常生活に支障が出るようになります。潜在的な患者を含めると日本人の約2400万人が患っているとされ、特に高齢者では末期まで進行して初めて病院へ行くというケースも珍しくありません。

変形性膝関節症の有病率

変形性膝関節症は、高齢になるほどに増加する膝の代表的な病気

 

人工関節置換術が広く認知されるようになった

二つ目に、そうした疾患に伴う人工関節の手術(人工関節置換術)が一般的な手術として認知されるようになったことがあります。人工関節は、関節に起きる疾患に対する治療の最終手段。膝関節以外にも股関節、肘関節など、身体のあらゆる部位に用いられます。

ドイツの人工膝関節置換術件数

【出典】Hip and knee replacement in Germany and the USA: analysis of individual inpatient data from German and US hospitals for the years 2005 to 2011. Wengler A, 2014 Jun 9;111(23-24):407-16

上記のデータは、ドイツで年間に行われている人工関節の手術件数です。膝の手術に限った数値ですが、総数は17万件近くあります。一方、日本の年間手術件数は約8万件ほど。日本より人口は少ないドイツですが、人工関節置換術は一般的に行われていることがお分かりいただけるでしょう。

とは言え、日本でも人工関節のニーズは右肩上がり。耐久性が20年と長くなったことや、手術の手法が確立したことなどから、この手術が世に認められるようになってきるのです。

日本の人工膝関節置換術の件数

【参考文献】
「TKA/UKA/PFA人工関節登録調査集計2006年2月〜2017年3月」日本人工関節学会

 

人工関節センターで治療を受けるメリット

それは「安心感」という言葉に集約されると思います。手術となれば、誰しも不安な気持ちを持つのは仕方ありません。少しでもその不安を和らげることが大切です。人工関節センターはその名の通り、人工関節による治療を専門にしています。人工関節センターにしかできないというわけではありませんが、特に次のような部分に注力している施設です。

 

初診から手術後までの治療がスムーズ

人工関節センターのスムーズな治療整形外科を標榜する病院も千差万別。ヒアルロン酸注射は打てても、人工関節置換術のように大きな手術を行う設備はないという病院もあります。そのため受診してから別の病院を紹介され、再度受診し、長い時間を待ってやっと手術、そしてリハビリ……というケースも。こうした待機時間を負担に感じてしまう人にとっては、つらいかもしれません。

人工関節センターであれば、初診であっても紹介であっても、受診から手術、リハビリ、さらには定期検診まで、同じ施設で一貫してスムーズに行うことができます。人工関節置換術の効果を決める、と言っても過言ではないのが術後のリハビリ。経過観察という点でも合理的に治療を進めることができるのです。

 

負担の少ない手術方法

負担の少ない人工膝関節置換術

手術による身体への負担を少なくするため、MISという手術方法やナビゲーションシステムなどを用いている人工関節センターも多くあります。

 

MIS(最小侵襲手術)

Minimum Invasive Surgeryの略語で、侵襲(身体への外的刺激)を少なくするための手術のこと。通常の人工関節置換術では、関節内がよく見えるよう、膝の中央を縦に大きく15〜20cmほど切開します。一方、MIS法は8〜12cm程度の切開で手術可能。傷跡が小さくなることや軟部組織(筋肉や脂肪など)への侵襲が少なく済むことから、術後に生じる痛みの緩和が期待できます。ただ、これはあくまでテクニックのことで、手術の内容は同じ。また、MISが全ての方に適応できるわけではないため、注意が必要です。

 

ナビゲーションシステム

コンピュータや赤外線カメラなどの技術を利用し、膝関節のあらゆる部位を総合的に分析するシステムです。膝の適確な位置に人工関節を設置するため、患者の骨をどのように切るか、靭帯をどのように調整するか、といった細かな部分まで計測できるのが特長。さらなる安全性を期待して、MISと組み合わせて手術を行う人工関節センターもあります。

 

合併症対策

人工関節置換術の合併症対策人工関節置換術の術前・術後にはいくつかリスクがありますが、血栓や感染症が代表的。これらは単独の人工関節センターでも対策をしていますが、総合病院に併設された人工関節センターであれば、さらに安心できるでしょう。数はあまり多くありませんが、予期せぬ合併症が起きても、内科など別部門と連携して対応することができるためです。

 

深部静脈血栓症の予防

手術前後で同じ姿勢を取り続けることなどから血管内で血が凝固し、血栓ができることがあります(深部静脈血栓症)。エコノミークラス症候群という別名を聞いたことがある人も多いでしょう。血栓が肺に到達してしまうと命に関わることもあるため、空気ポンプや着圧ソックスを脚に装着するなどの一般的な予防法に加え、血栓の発見のためエコー検査を行ったり、血液の凝固を防ぐ薬剤を使用したりして血栓を予防します。

 

感染症の予防

感染症も、人工関節置換術を行う前後に注意すべき合併症の一つです。人工関節が重度の感染を起こすと、ゆるみに繋がったり周囲の骨が溶け出したりして、再手術を行わなければならなくなることも。感染の経路としては、自身の持つ細菌による感染や、術中に空気中から細菌が入り込むことによる感染があります。
一般的に、人工関節置換術の術前には抗生剤の投与を行います。手術にはクリーンルームという手術室を用いるなど、万全の対策が施されることが多いでしょう。クリーンルームについてはこのあと詳しくご紹介します。

 

人工関節センターが近くにない場合の病院選び

近くに人工関節センターがない、予約が埋まっていて人工関節センターを受診できないという方でも、心配する必要はありません。先にご紹介したような手術方法や仕組みは、人工関節センターではない一般の病院でも提供されているからです。とは言え、できる限りの安心感を得て治療に臨みたいところ。そのために知っておくべき病院選びのポイントをお教えします。

 

過去の執刀数(実績)

人工関節置換術を行う病院の選び方過去の執刀数(手術を行った件数)がサイトに掲載されている病院も多くあります。その情報が全てというわけではありませんが、執刀数が多いのは経験が豊富な証拠。安心材料としての情報には十分なり得るかと思います。

 

リハビリの充実度

人工膝関節置換術後のリハビリ膝関節にせよ股関節にせよ、人工関節置換術は術後のリハビリこそ重要。「手術して終わり」では、手術の効果を最大限に発揮できません。そこで行う手術やリハビリについて、明確なビジョンを描ける病院を選びましょう。治療の選択肢を広く持っていることが望ましいため、何名ほどの理学療法士が在籍しているか、どのようなリハビリを提供しているのか、事前にウェブサイトなどを利用して把握するのも一つの手段です。

 

クリーンルームの有無

人工関節の感染予防クリーンルームとは、感染を予防するために用いられる、空気の清浄度が高い手術室のことです。クリーンルームには清浄度を表すクラスがあり、日本の規格はクラス1〜9までの9段階。その数値が小さいほど清浄度は高くなります。確かな統計を取ったわけではありませんが、クラス3のクリーンルームを保持している病院が多い印象です。それでも十分に清浄度が高いと言えますが、クラス2以下であればさらに安心できるでしょう。

通常、人工関節置換術にはクリーンルームが使われますが、病院によってはクリーンルームを保有していないこともあります。ただ、そうした病院が衛生管理を怠っているわけではないため注意。術後の感染症のリスクは0.5%〜1%と高くはないため過剰に心配する必要はなく、感染の全てが術中に起こるわけでもありません。先にお話したような抗生剤の予防投与などにより、術中以外の感染を防ぐことも同様に大切なのです。ただ、クリーンルームの有無や清浄度の高さは間違いなく安心材料となります。事前にそれらを確認しておいて損はないでしょう。

 

学会の評議員が常勤しているかどうか

膝治療の学会発表少し専門的になってしまいますが、下肢関節に関する学会(日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会、日本股関節学会など)で評議員を務める医師が常勤でいる医療機関を選ぶ、という方法もあるかもしれません。経験・業績の秀でた医師が常勤している病院であれば、指導も行き届いていると考えられます。そのような病院ならば、大きな不安を感じることなく治療に臨めるのではないでしょうか。

 

安心も治療の一つ。大切なのは主治医との意思疎通

主治医とのコミュニケーション専門性が高いという安心感こそ、人工関節センター最大のメリットと言えるでしょう。手術を受けることになっても、不安が残ったままでは、手術はおろか術後のリハビリまで上手く進まなくなってしまうかもしれないからです。

ただ、ご紹介した人工関節の手術や手法、治療の流れは、どれも人工関節センターにしかできないわけではありません。「人工関節センター」と名乗っていない病院でも、良い治療を提供してくれるところは多くあります。人工関節センターであってもそうでなくても、最も重要なのは安心して治療を受けること。それは医師との綿密なコミュニケーションの中で生まれる信頼感とも換言できます。自分の納得のいく方針で安心して治療を進めることで、最高の結果が生まれるでしょう。

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