ひざ痛チャンネル編集部
2017-10-16

【変形性膝関節症の手術療法】気になる費用や入院期間も徹底分析

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【変形性膝関節症の手術療法】気になる費用や入院期間も徹底分析

一度患ってしまうと治療が難しい膝の病気、変形性膝関節症。痛みを鎮めるための薬や注射が効かなくなり、「手術」という二文字が頭をよぎっている方、いませんか? でも、手術という治療を想像すると、怖くて二の足を踏んでいる……。それならこの記事をご覧ください。

変形性膝関節症で手術の適応となるのはどんな人か、手術方法や入院期間、そして気になる手術費用まで、詳しく解説します。きっと膝の痛みから解放されるきっかけとなるでしょう!

変形性膝関節症の3つの手術と適応

変形性膝関節症は膝関節にある軟骨がすり減ることで、クッションのような役割を担っていたものがなくなり、膝関節に様々な症状が現れる病気です。治療は保存療法と手術療法の2つに大別され、まずは保存療法をとるのが基本。ただ、進行するほどに効果は薄れてしまいます。末期になると、保存療法にはほとんど効果が期待できません。

進行度や症状によっても適した治療は異なりますが、変形性膝関節症に対して行われる手術は下記の3つ。まず、手術という治療方法が検討される条件を2つ、知っておきましょう。後に、それぞれの手術について詳しく解説していきます。

変形性膝関節症の3大手術

手術の適応① 保存療法を6ヵ月以上しても膝痛が改善しない

一般的に、薬物療法や運動療法といった保存的な治療を6か月ほど継続しても痛みが改善しない場合が手術の適応条件とされています。痛みが持続するということは、変形性膝関節症が進行しており、太ももの大腿骨と脛骨がぶつかり合っていると考えられます。もし日常生活にも支障が出るほどの痛みがあるならば、さらに重症です。この段階では、手術による治療が必要と言えるでしょう。

 

手術の適応② X線検査で変形性膝関節症のグレード3以上と診断

変形性膝関節症の診断にはK-L分類(Kellgren-Lawrence)と呼ばれる、4段階のグレード評価があります。グレード2以上が変形性膝関節症と定義され、基本的にグレード3以上(場合によってはグレード2以上)が、手術療法を勧められる目安です。

変形性膝関節症のグレード

 

グレード1

関節裂隙(れつげき:骨と骨の隙間のこと)は保持されていますが、わずかな骨棘(こつきょく※骨がとげのように変形した状態)や軟骨下の骨硬化(骨と骨がぶつかり合い、硬くなること)が見られる状態。変形性膝関節症の予備軍です。

グレード2

関節の隙間が狭まり(25%以下の消失)、わずかな骨棘が見られますが、骨の変形は確認できない状態。変形性膝関節症の初期段階です。

グレード3

関節の隙間が50%~70%消失し、骨棘や骨硬化が確認できる状態。変形性膝関節症の進行期段階です。

グレード4

関節の隙間がほぼ消失(75%以上)。大きな骨棘や骨の変形が激しい状態。変形性膝関節症の末期段階です。

 

手術① 関節鏡視下手術

関節鏡視下手術

関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)とは、内視鏡を用いた手術のことです。棒状の高性能カメラを使用して膝関節内部を見ながら、処置を行います。

炎症を起こしている滑膜の切除や、毛羽立った軟骨の除去によって症状の改善が見込まれる方が対象です。また、大きな手術(後述の2つの手術)に抵抗を感じる方が、まず関節軟骨評価のために行うこともあります。関節鏡の直径は4mmほど。まずは膝関節の周囲に3mmほどの穴を2〜3ヵ所開け、関節鏡を挿入。カメラの映像はモニターに映し出され、医師はそれを見ながら処置をします。

 

術後の入院期間

手術後は約1週間(早ければ2~3日)の入院をすることになります。

 

メリット・デメリット

この手術は切開する部位が小さいため傷跡が残りにくく、身体への負担も少ないのがメリットです。ただいずれの処置も、膝の痛みを緩和させることが目的。関節軟骨を修復したり、変形性膝関節症を根本から治すものではありません。そのため、症状が重度の方は手術後も効果を得られないことが多いでしょう。時間が経つと元の状態に戻ってしまい、症状再発の可能性があることもデメリットです。

 

手術② 高位脛骨(けいこつ)骨切り術

変形性膝関節症でO脚(がに股)、X脚(内股)に苦しむ、主に進行期の方が対象となる手術です。O脚、X脚は、それぞれ膝の内側、外側に負荷が集中。その部分の軟骨が摩耗し、大腿骨と脛骨がぶつかり合うことで痛みが生じるのです。

「高位脛骨骨切り」とは、すね(脛骨)の高い位置を切る、という意味。脛骨の上部を切って広げることで、骨の角度を矯正し、人工骨やプレートを入れることで左右のバランスを整えます。自身の関節を温存できるため、重労働やスポーツの継続を望む方に適した手術です。絶対的な条件として、O脚の場合は膝関節の外側、X脚の場合は内側が損傷していないことが挙げられます。

 

手術方法

この手術にはオープン・ウェッジ法とクローズド・ウェッジ法の2種類があります。

オープン・ウェッジ法

オープン・ウェッジ法では脛骨の内側(X脚の場合は外側)から骨に切り込みを入れます。切った部分を広げ、そこへ人工骨を入れてプレートで固定することで、膝関節にかかる負担のバランスを矯正することができるのです。矯正できる角度には限界がありますが、人工骨の材質が改良されている現在では最も多く行われています。手術時間は約1時間半程度で、手術後の回復が早いのもメリットです。

オープン・ウェッジ法

 

クローズド・ウェッジ法

矯正する角度が大きい場合はオープン・ウェッジ法ではなく、クローズド・ウェッジ法の適応となります。まず脛骨の外側(X脚の場合は内側)から、骨をくさび形状に切除。骨の長さを調節するため、脛骨の後ろにある腓骨も同時に切り取る必要があります。それらの骨の断面をきれいに合わせプレートで固定し、膝関節の変形やかかる負担のバランスを調整することで、痛みの緩和が期待できるのです。オープン・ウェッジ法よりも切開範囲は広いですが、そのぶん矯正できる角度も大きくなります。手術時間はオープン・ウェッジ法と同じく、約1時間半程度です。

クローズド・ウェッジ法

術後の入院期間

手術後はリハビリを行いながら3週間ほどの入院が必要です。1~2週間ほどで松葉杖での歩行が可能となるでしょう。骨が完全にくっつくまでに数か月間を要するため、退院後もリハビリを続ける必要があります。

 

メリット・デメリット

重労働やスポーツなど、膝に負担がかかる活動を再開可能。持続効果も10年以上と、大きなメリットがあります。一方で、骨を切るという手術のため、骨がもろくなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を患っている方には適応できません。その観点からも、比較的若い方に行われることが多い手術です。なおプレートは除去することもあり、その際は再手術が必要となります。

 

人工膝関節置換術

傷んだ関節部分を切除して人工のものと入れ替える手術で、変形性膝関節症の治療における最終手段とされています。変形性膝関節症が末期まで進行し、膝関節が大きく変形している方や、痛みが強い方が対象。手術の際には身体への負担がやや大きくなりますが、手術後には痛みの大幅な緩和が期待できます。

人工関節はチタン合金やポリエチレンなど、人体への影響が少ないものでできています。人工関節を本来の骨に固定する方法は、骨セメントという固定剤を使ったセメント固定と、表面に凸凹の加工のある人工関節を骨に埋め込むセメントレス固定の2種類。セメント固定は手術当初はしっかり固定されているものの、経年で弛む可能性があり、セメントレス固定は時間とともに弛むことは少ないですが、しっかり固定されるまでに時間が必要です。手術方法と固定方法によって、手術の所要時間が多少異なります。

 

手術方法

人工膝関節置換術には、単顆置換術と全置換術の2種類があり、損傷した膝関節の部位によって決定します。

 

人工膝関節単顆置換術(UKA)

損傷の激しい部分だけを人工部品に置き換える手術です。関節のすり減りが内側だけなら内側だけ、外側だけなら外側だけ人工関節と入れ替えます。自身の骨や関節を残せるため違和感が少なく、身体への負担も少し軽くなるでしょう。しかし、人工の骨と自分の骨とのバランスを取る難しさがあるため、手術の難易度は上がります。手術の所要時間は1時間~1時間半です。

人工膝関節単顆置換術

人工膝関節全置換術(TKA)

関節全体を人工部品に入れ替える手術です。膝関節全てが人工物に代わることから、身体への負担がやや大きくなります。手術の所要時間は2時間ほどです。

人工膝関節全置換術

 

術後の入院期間

入院期間の目安は3〜4週間ほど。いずれの手法も、術後は可能な限り早い段階でリハビリを開始し、1週間ほどで杖を使用しての歩行が可能となるでしょう。

 

メリット・デメリット

人工の関節と置き換えることで、自身の骨同士がぶつかり合うことがなくなり、痛みの大きな緩和が期待できます。術後は普段の生活を送れるほどに回復するでしょう。人工関節の耐久年数は20年ほどと長くなっていることから、効果の持続性も十分です。

デメリットとしては、人工関節には合併症のリスクがあるということ。感染症や脱臼がその例です。万が一それらが起きてしまうと、人工関節を取り外して再び入れ直す再置換手術を行うことになる場合も。ただ、感染が起きる可能性は0.5%ほどのため、過度に心配する必要はありません。

 

手術費用には保険が適用可能

変形性膝関節症の手術費用手術と聞くと、気になるのが費用ではないでしょうか。かなり高額な費用が必要と思われるかもしれませんね。しかし、紹介した手術は全て保険適用。70歳以下の方なら全費用の3割が自己負担となります。同様に70歳以上~75歳未満の方は1割(平成26年4月以降に70歳になった方は2割)、75歳以上の方なら1割です。ただし、70歳以上の方で、現役並みの所得(月額約28万円以上の報酬)がある方は3割が自己負担額となります。

 

関節鏡視下手術の費用

関節鏡視下の滑膜切除術が17,610点。1点が10円の計算です。つまり17万6100円。3割負担の方なら約5万3000円、1割の方であれば約1万8000円となります。

 

高位脛骨骨切り術の費用

高位脛骨骨切り術の保険点数は22,680点(22万6800円)。さらに麻酔などの治療材料費(約10万円~15万円)がプラスされます。3割負担の方であれば、合計で約10万円〜12万円。1割負担の方は3万円〜4万円となります。

 

人工膝関節置換術の費用

人工膝関節置換術の点数は、37,690点(37万6900円)。これは部分置換術と全置換術で同様の点数です。治療材料費を合計すると約80万円にもなりますが、患者負担額は3割の方なら約24万円。1割の方は約8万円となります。

 

高額療養費制度

さらに高額療養費制度(年齢や所得に応じて、1カ月間に負担する医療費の上限が定められており、これを超える分が保険から支給される制度)を使用することで、負担上限額が約4万円~18万円となります。高額な手術を受ける際には、申請が必須でしょう。上記には入院の際の差額ベッド代や食事代は含まれないので、ご注意ください。

 

手術は自分に合ったものを選択

変形性膝関節症の手術適応変形性膝関節症の手術は大きく分けて3種類。それぞれがメリット・デメリットを持っています。どの手術が最良なのか、それはあなたの症状・持病、年齢、そして「こんな生活をしたい」という目標によっても変わってきます。

手術は大掛かりな治療ですが、そのぶん期待できる効果も大きくなります。あなたにとって最適な手術を選択することで、病気を回復へと導いてくれるに違いありません。

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