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変形性膝関節症の治療法のひとつに、人工関節置換術という手術がありますね。大幅に痛みの解消が期待できる反面、大掛かりな手術、人工物であるといった理由から不安を抱いている人も多いのではないでしょうか。最近、そんな人たちから注目が集まっている、新たな治療法があります。
それが再生医療。実は、すでに研究以外での提供もはじまっています。どんなもの? 期待できる効果は? 実際に受けた人の口コミは? 注意点はあるの? など、気になる情報をもれなくお届けします。読めばきっと、再生医療にしろ、人工関節置換術にしろ、自分にあった本当の治療法を検討する術が見えてくるはずです。(情報提供:東京ひざ関節症クリニック)
すでに提供されている最新の治療法
細胞シートや自家培養軟骨移植など、大学病院で研究されているイメージの強い変形性膝関節症の再生医療。そのため、すでに一般のクリニックなどでも提供されている治療があることは、あまり知られていません。自由診療にはなりますが、2019年1月現在では次のような再生医療を治療の選択肢に加えることができます。
血液を活用する「PRP療法」
自分の血液から抽出した組織の修復を促す成分を、患部に注射器で注入するというPRP療法。MLBヤンキースの田中将大投手や、エンゼルスの大谷翔平投手が肘の治療として受けたこともあり、ご存知の方は多いのではないでしょうか。 確かに靭帯損傷などのスポーツ外傷で用いられることの多いPRP療法ですが、関節症の治療にも取り入れられています。
海外の研究報告にも、変形性膝関節症の治療として有用性が期待できる報告が。PRP療法後、膝関節内のヒアルロン酸が増加し、炎症に関わる物質は逆に減少していたと思われる結果が得られています。
【参考文献】
吉岡友和ら. 変形性膝関節症に対する多血小板血漿関節内注射治療. 整・災害. 57: 91001-1009; 2014.
脂肪を活用する「脂肪幹細胞治療」
脂肪組織には再生医療のカギを握るとも言える、幹細胞が存在します。ADRC治療は、脂肪由来幹細胞を含みSVFという細胞群を抽出し、関節内に注射するという再生医療。TV番組でも紹介された治療法なので、ご存知の方もいるかもしれませんね。実は、海外ではプロアスリートがチームレベルでケガ治療に利用していたりもします。
脂肪由来幹細胞の有用性は2000年代始めから注目されていて、様々なジャンルで応用が検討されています。そんな中、整形外科領域では一足はやく、一般にも自由診療として採用。そのひとつがADRC治療というわけです。この再生医療は、すでに国内外の医療機関で研究が重ねられており、抗炎症作用や痛みの改善といった効果が確認されています。
脂肪由来幹細胞を増殖させる「培養幹細胞治療」
脂肪を活用する再生医療は、ただ幹細胞を注入するだけにとどまりません。抽出した脂肪由来幹細胞を培養することで、何十倍にも増やして、膝関節に注入するという治療法です。
下のグラフは、変形性膝関節症に行った培養幹細胞治療の調査報告の一部です。治療後の痛みを数値化したスコア(WOMAC)の経過遷移ですが、数値が減少しているのが見て取れます。特に、Low Dose(脂肪由来幹細胞200万個)のケースにおいて、統計的にも有意と言える改善が現れたようです。また、84名中、4名に有害事象が見られたようですがどれも軽症で、この治療法の安全性も示されました。
3つの再生医療はどんな治療法?
いま受けられる再生医療にどんなものがあるかをおさえたところで、これらの再生医療がどんな方法で行う治療法なのかを見て行きましょう。
PRP療法
PRPは、血液に含まれる血小板を濃縮することから、多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう:血小板を多く含む血液の液体成分という意味)とも言われます。
そもそも血小板には、細胞の増加や分化を司るタンパク質の一種の成長因子がとても豊富に含まれています。細胞分裂を促進したり、組織の修復に必要な細胞を呼び寄せたり、骨や血管に必要なコラーゲンを産生したりする働きを持つ成長因子。ケガをしたときは血小板が中心に作用して止血しますが、そのときに様々な成長因子が分泌されているのです。
PRPに含まれる成長因子は通常の3〜5倍の濃度。そんな、言わば成長因子の濃縮ジュースを膝関節などの患部に注射器で注入するというのが、PRP療法です。変形性膝関節症によってすり減った関節軟骨が再生したという報告はまだ見られませんが、冒頭で触れたような膝の痛みという症状に対しては良い結果が得られています。
治療の手順
- 腕の静脈から30mlほど採血します。
- 採血したものを遠心分離にかけ、PRPのみを抽出します。
- PRPを膝関節内に注射。所要時間は1時間かからないくらいでしょう。
※施設によって採血量が違ったり、添加物を加えるなど、方法は異なります。
脂肪幹細胞治療
自分の脂肪組織から脂肪由来幹細胞を含むSVFという細胞群を抽出し、膝関節内に注射する治療法です。SVFの抽出には主に、セリューションという特殊な機器を使用。全世界でも約200施設が導入している機器で、うち40施設が実際に関節内治療に活用されています。
そもそも幹細胞には他の細胞に分化するという能力が備わっています。つまり、膝関節で言えば、骨や軟骨、靭帯などを構成する細胞にも変身し得るというわけです。理論上ではそうなのですが、現在はっきりと確認されている効果は、先にあげた抗炎症と疼痛抑制の作用による、痛みの軽減。ただ一部で、関節内の状態が改善されているレントゲン資料(右)も存在します。
脂肪を採取する必要がありますが、細いカニューレ(管)を使って吸引するため、入院が必要なほど大掛かりな手術にはなりません。提供するだいたいの施設で、日帰り治療が可能かと思われます。
治療の手順
- お腹や太ももの脂肪を、100〜350ml採取します。その際は、麻酔を使用します。
- セリューションで遠心分離させ、SVFを抽出します(350mlの脂肪なら、およそ5mlのSVFを抽出)。
- SVFを注射器で膝関節内に注入。所要時間は4時間ほどとなります。
- 入院はなく、治療後は帰宅可能です。
- 小分けの凍結保存ができる施設もあり、経過に応じて注入したり将来に備えたりすることもできます。
培養幹細胞治療
脂肪由来幹細胞をたくさん注入しようとすると、どうしても脂肪もたくさん採取しなければなりません。ただ、脂肪採取量が増えると、体への負担も増してしまいます。そこで、少ない脂肪幹細胞を増殖させる方法をとったのが、この培養幹細胞治療です。
培養方法や個人差によっても増える量は異なりますが、20mlというおちょこ1杯分くらいの脂肪から3000万個の幹細胞量までに増やす方法もあります。もちろん、1度に3000万個を注入してしまうわけではなく、小分けに凍結保存しておいて、経過に応じて追加注入したり、将来に備えたりすることも可能です。
期待できる作用は、脂肪幹細胞治療と同じ。改善数値は先に触れたグラフの通りです。また、症例数は効果として言うにはまだ少ないのですが、術前後のMRI画像を比較すると、関節軟骨の厚みが増していたケースも見られます。
治療の手順
- お腹や太ももの脂肪を、20ml採取します。その際、麻酔を使用。だいたい30分〜1時間ほどです。
- 厚生労働省から細胞加工の許可を受けた施設で、脂肪由来幹細胞を抽出し、1ヵ月前後かけて培養します。
- 培養した脂肪由来幹細胞を膝関節内に注入。所要時間は、5〜10分くらいです。
- 入院はなく、治療後は帰宅することができます。
- 小分けの凍結保存ができる施設もあり、経過に応じて注入したり将来に備えたりすることも可能です。
変形性膝関節症を治療した人の声
実際に提供されているので、既に再生医療を受けた変形性膝関節症患者の方も、もちろんいらっしゃいます。生の声をいくつかご紹介しましょう。
PRP療法の体験談
65歳・男性
PRP療法を受けられる以前に、関節鏡視下手術の経験があった患者さまです。
最初は先生の説明通りに痛みが推移していたので完治を期待しましたが、私の膝関節の状態は思いのほか重傷だったのだと思います。私のように重傷でなければ、完治の可能性は高いと感じました。
42歳・男性
22歳のときに、右十字靭帯が断裂したのをきっかけに、身体のバランスが崩れ、両足とも変形性膝関節症と診断された方です。PRP療法前には、整体・湿布・痛み止め・ヒアルロン酸注入・運動療法など、様々な保存療法を行われていました。
歩行はかなり楽になっています。まだ右膝の治療のみなので、左膝の治療の経過次第でもっと楽になれると期待したいです。
45歳・女性
トライアスロンの大会中に右膝内側に違和感を感じ、それから少しずつ痛くなってきたという、変形性膝関節症の患者さまです。
PRP治療後2、3日は右膝の痛みと腫れが少しありました。今現在は右ひざの内側に少し違和感があるため、アイシングをしています。PRPの治療後は、ストレッチや体幹トレーニングを入念にやった方がいいと思います。
脂肪幹細胞治療の体験談
71歳・男性
変形性膝関節症で、趣味のゴルフに支障が出たり、階段を下りる際に膝の痛みを感じたりしていた患者さま。整形外科で湿布やヒアルロン酸注射による治療を受けていましたが、また元通りゴルフをしたいと再生医療を選ばれたそうです。
違和感があるが術後10日目、1か月目にゴルフプレーが出来ました。階段の上り下りも支障なく出来るようになりました。思いきって受けるといいと思います。
82歳・女性
歩行が困難なほど両膝の痛みがひどく、転倒したり起き上がれないこともあったという患者さま。ただ、人工関節の手術は体力的な不安もあり悩んでいたところ、娘さんから脂肪幹細胞治療を紹介されたそうです。
手術前は足を引きずりながらやっとのことで歩行できたが、今はゆっくりであれば、両足に体重をかけ、しっかりと地面につけて踏みしめながら歩くことができます。
お腹の手術をしたので、暫く安定するまではいつも気になっていましたが、キズも小さく、
薬を塗る必要もないので、ケアの負担が少なくて助かりました。
77歳・女性
職業柄、長時間座っていることが多く、気づいたら膝を悪くしていたという女性患者の方です。整形外科に半年ほど通院したのですが良くならず、見かねた娘さんがこの治療を見つけて勧められたと言います。
治療で良かったのは、入院せずにできることと、回復に希望を持てたこと。昨年は選挙すらへも出かけられませんでしたが、今月には孫の授業参観に行くことができました。
培養幹細胞治療の体験談
79歳・女性
膝に水がたまり、痛みも強く、ヒアルロン酸注射の治療を受けていたという変形性膝関節症の患者さま。3年ほど前からは、そのヒアルロン酸注射を受けに通院することもできなくなったそうです。近所の整骨院に通うものの、左膝にも痛みが現れ、膝もまっすぐ伸びなくなっていました。見るに見かねた娘さんの勧めから、再生医療を受けることにしたそうです。
ゆっくりだが、確実に良くなっていることを感じる。以前には出来なかったことが出来るようになった。人工関節手術は恐ろしく感じるので、受けなくてよかった。膝に力が入るようになった。
82歳・男性
変形性膝関節症による膝の痛みから、近所の医院で薬やマッサージの治療を受けていた男性患者さま。ついに人工関節置換術を提案され違う治療を探していたところ、この再生医療に出会い、培養幹細胞治療を決断されたと言います。
問題なく歩けるようになった。ちゃんと椅子に座り、リハビリを続けていました。
治療の価格が高いので、即決は難しいと思いますが、傷みからの解放は、新しい人生に大切だなと思いました。孫に会いに北海道へ行きたいです。新しい人生が開けたようです。
70歳・女性
60代のときから両膝が痛く、大学病院でヒアルロン酸注射による治療を受けていた、変形性膝関節症の女性患者さま。1年前に人工関節を受けないかと担当医に勧められたそうです。ただ、入院はできない状況だったのと、誰もが手術で良くなるとは限らないとインターネットで調べ、再生医療を見つけられたと言います。
私にはあまり効かないのかな?とか思った時もありましたが、薄紙を剥ぐように確実に良くなり、杖も忘れ、痛みや不自由さから解放されてきました。生活の質も一段と良くなり、今は毎日が幸せな気持ちです。
焦らず、しっかりリハビリしていれば、あれ!!と思う日が必ず来ると思います。
注意点
患者さまの声でも触れられている点もありますが、再生医療が万能治療というわけではありません。前述した患者さまの声に加え、次にあげる点もよく理解した上で検討されることをおすすめします。
費用の負担が大きい
整形外科で受ける変形性膝関節症の治療には、ほとんど保険が適用されます。ヒアルロン酸注射も人工関節置換術も、費用は1〜3割の負担で受けることが可能です。しかし2019年1月現在、再生医療はまだ保険適用ではありません。そのため費用は10割負担となります。先ほどご紹介した患者さまの声でも何人かが触れているように、治療費が高いという難点があります。
PRP療法であれば、5万円前後。脂肪幹細胞治療や培養幹細胞治療は100〜200万円ほど。ただ、医療費控除の申請を確定申告で行えば、税金から治療費の一部が還付される医療費控除が適用となる場合があります。
提供できるのは厚生労働省の許可を受けた病院のみ
再生医療と定められた治療法を行うには、国の許可を受ける必要があります。許可なく実施した病院・医師は、法のもと厳しく罰せられます。
以前は再生医療のような新しい治療も、医師の裁量のもと、文字通り自由に提供することが可能でした。しかし、2014年に「再生医療等安全性確保法」が施行。再生医療の提供は、どんな疾患にどんな目的で行うかなどを申請する再生医療等提供計画を提出し、許可を受けた医療機関だけに許されています(実際には、疾患や目的以外に様々なエビデンスをまとめた資料など、複雑な手続きが必要)。
許可を受けた医療機関には、提供計画番号が発行されます。この番号を持たない医療機関は、違法に治療を行っていることに。そんなことあるの? と思われるかもしれませんが、昨年実際に摘発された医療機関もあるので(整形外科分野ではありませんが)、注意点にあげておきます。
適応にならない人もいる
変形性膝関節症のすべての患者さまに、再生医療が適応となるわけではありません。病態によっては再生医療では改善が見込めず、やはり人工関節置換術の適応となる場合もあります。また、持病などの影響から受けられないケースも。
実際に検査や診察をしてみないと判断できないことですが、この点も留意しておいた方が良いでしょう。
※再生医療の適応かどうかは、事前のMRI検査で確認します。どんな検査内容か? 費用はどのくらいか? など、詳しくは「MRIひざ即日診断」をご覧ください。
選択肢のひとつとして検討の価値あり
重度の変形性膝関節症では、軟骨や半月板も損傷し、骨同士がぶつかり合うようになります。その状態を完全に回復させる治療法はこれまでになく、現在の医療技術を用いても簡単なことではありません。ただ、ひざ関節内の環境を整えてくれる再生医療は、着実に発展中。この記事でご紹介したように、血液を使ったPRP療法や、脂肪から取り出した幹細胞を用いる治療は、選択肢としてどんどん広がっています。再生医療を受けたことで「人工関節の手術を受けずに過ごせている」「痛みがなくなった」「趣味を楽しめるようになった」など、喜びの声が多く上がっていることも事実です。
あらゆる治療法と同様、効果には個人差があります。ただ「再生医療という選択肢も、ありかもしれない」そうお考えの方は、まず再生医療がご自身に適応となるのか、一度検査してみてはいかがでしょうか。もし適応だった場合、費用や術後のことも含めて、手術など保険診療の治療法と並べて検討することができます。その先はみなさんの判断になってしまいますが、選択肢を広げてみることから始めるのも、現状を打開するためのひとつの手段かと考えます。
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