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「変形性膝関節症と診断され治療を受けているけど、膝の痛みが良くならない」。そのため、治療や主治医に不信感を抱いている人は少なくないようです。それなら、この記事で紹介する内容を必ずチェックください。あなたの膝がなぜ痛いままなのか、原因が判明するかもしれません。
今回は、変形性膝関節症の治療が効かないケースに注目し、原因と対処法についてお話します。読めばきっと、あなたも変形性膝関節症にどう向き合えばいいのか分かるはずです。
治療しても変形性膝関節症が改善されない原因
変形性膝関節症の膝の痛みがなぜ良くならないのか、早速、気になる原因を見ていきましょう。心当たりがある人は、その後の対処法までご確認ください。
変形性膝関節症が改善しない原因1:生活習慣が治療前と同じ
変形性膝関節症と診断された人はすでに医師から説明があったかと思いますが、この膝の病気、日常生活ととても深い関係にある病気です。「【変形性膝関節症の原因】40代は必見!予備軍チェックと予防法」であげたチェック項目を見ても分かるように、危険因子の多くは日常生活でどんなことをしているか。医師が施す治療で症状が改善されない、むしろ悪くなっていると感じるような場合は、日常生活の中でも、特に次のようなことが関係しているかもしれません。
日常の動作(ADL)
変形性膝関節症と診断されたときに、膝に負担のかかる行動を控えるよう指導があったはずです。具体的には、「しゃがむ・立つ」「重いものを持つ」「階段の上り下り」などがあげられます。頻繁な膝の曲げ伸ばしは関節を酷使しますし、重い荷物を持てば加重が増加。さらに、階段での膝への負荷がかなり大きく、上りだと体重の約3.2倍、下りは約3.5倍にもなることをご存知でしょうか? こういった行動をできるだけ減らすことがとても重要なのです。
運動習慣
診断前まで運動らしい運動をしていなかったという人、治療と平行して軽い運動を始めていますか? 膝が痛いから安静にし過ぎていると、逆に膝の痛みが悪化することもあります。なぜなら、膝周辺の筋肉が膝への負荷を軽減しているから。つまり、筋肉が衰えるほどに膝に直接負担がかかるようになるというわけです。
また、運動する習慣を持っている人は、やりすぎている可能性も……。本格的にスポーツを行っている人はもちろん、日課にウォーキングを取り入れている人でも、歩きすぎは毒となります。
食事内容
階段の上り下りの話にあるように、膝関節にかかる負担は体重とイコールではなく、立っているだけでも2.5倍に! そのため肥満の人の場合、減量しなければ軟骨のすり減りは進行。痛みはなかなか改善されないでしょう。
この肥満、先にあげた運動にも関係しますが、食事にも気をつける必要があります。もし、変形性膝関節症と診断される前の食生活に問題の心当たりがあり、それを改善していないなら、治療が効かない原因はそこにあるかもしれません。
変形性膝関節症が改善しない原因2:治療間隔が空き過ぎ
治療を受けているつもりでも、正しいスパンでなければ、変形性膝関節症への本来の効果を得ることは難しくなります。この原因は、ヒアルロン酸注射や運動療法(リハビリ)などに言えるでしょう。
ヒアルロン酸注射の治療間隔
ヒアルロン酸注射による変形性膝関節症の治療は、週1回を3〜5週ほど続けて行います。保険適応が認められている5週目を過ぎると、その後は2週間であれば継続可能。ですが、最初から1ヵ月くらい空いてしまうようなことがあれば、効果は現れにくいと考えられます。
リハビリテーションの治療間隔
リハビリもできれば週1、2回のペースでやるのが理想的。ただ、少ない回数であまり膝の痛みが変わらないと、効いていない感じがして足が遠のいてしまいがち。すると、さらに「やっていても改善されない」状況が続くことになるでしょう。
変形性膝関節症が改善しない原因3:診断が間違っている
基本的にはどの医師もきちんとした検査のもと、変形性膝関節症と診断しているはずなので、確立としてはとても低い原因です。ただ、生活習慣も改善していて治療周期も守っているのに良くならない場合、もしかしたら診断が違うということがあるかもしれません。
可能性としては、そもそも疾患の鑑別が違っている場合と、変形性膝関節症の進行具合を見極められていない場合があります。
疾患の鑑別が間違えている場合
変形性膝関節症と症状が似ている膝の病気が他にもあります。例えば、変形性膝関節症と同じく膝の内側に痛みが生じる鵞足炎や半月板損傷、突発性骨壊死など。また、前面の膝下であれば膝蓋靭帯炎やタナ障害もあります。さらに、同じ関節炎の中でも、関節リウマチや偽痛風、化膿性関節炎と正しく鑑別されていなければ、治療効果は期待薄です。
変形性膝関節症の進行が診断より進んでいる場合
変形性膝関節症には、X線(レントゲン)所見によるKellgren-Lawrence分類(K-L分類)という診断基準があります。分類は大きく4段階。グレード1は軟骨に多少の変化があるけれど、骨と骨の間に狭まりはないというまだ予備軍な膝の状態で、グレード2以上に変形性膝関節症という診断名がつきます。初期症状のグレード2では関節の隙間の狭まりが25%以下、中期のグレード3では50〜70%、末期のグレード4は75%以上という目安。その他にも軟骨や骨の変形、レントゲンに白く写る骨硬化という異変の度合いも診断する上では確認します。ただ、レントゲンだけだと詳しく見極められないケースもあり得るのです。
変形性膝関節症が改善しない原因4:進行しすぎて手術しかない
この原因については、もしかしたらと薄々気づいている人もいるかもしれませんね。医師の直接的な処置としては、ヒアルロン酸注射の次は手術というのが変形性膝関節症の治療法の現実。そのため、ヒアルロン酸注射でどうにかなるレベルではないけれど、あとは手術以外に方法がないため、漫然とヒアルロン酸注射を行っているというケースも少なくないようです。
医師に手術を勧められているけど決心がつかないという人が多いですが、なかには若いからまだ早いなど、医師の考えによっては手術を積極的に勧めない、勧められないことがあるとも考えられます。
変形性膝関節症で治療が効かない場合にとるべき行動
これらの原因に心当たりはありましたか? もしあったなら、それぞれの原因別にこのようなことを意識してみましょう。
生活習慣を改善する方法
生活習慣が原因なら、それを少しずつ変えることを始めてみてください。行動、運動、食事、それぞれの面で、具体的に次のようなことを実践することをおすすめします。
日常の行動の改善法
しゃがんだり立ったりなどは、仕事上やめられないという人もいるでしょう。そんな人はプライベートなオフの時間だけでも変えてみてください。例えば、和式の生活から洋式にするのもひとつ。椅子に座るようにすることで、立ち上がりの負荷が軽減されます。敷き布団をベットにするのも同様の理由で有効です。
階段の上り下りでは必ず手すりで支えるのも大切ですし、専門科に相談して自分に合った靴選びをすることも良いでしょう。
変形性膝関節症におすすめの運動
まずひとつに、有酸素運動があります。水泳や自転車なども良いですが、気軽に始めるならウォーキングですね。酸素の巡りを良くするので、肥満予防や筋力低下といった運動としての効果の他にも、血流が促進されて痛みが緩和されるという作用も期待できます。ただし、やりすぎは禁物。1日あたり10,000歩以上歩いているという患者さんもいますが、膝のことを思うと8,000歩くらいに止めた方が良いでしょう。下腹部に力を入れて背筋を伸ばし、まっすぐ前を見て少し広めの歩幅で歩くなど、正しいウォーキングフォームで行ってください。
原因で触れたように筋力の維持、特に太ももの筋力が膝の負担削減には重要です。方法としては、椅子に座った状態で膝を曲げ伸ばしするだけでもOK。2秒使って足をあげ、2秒使って下ろす。これを1日30回くらい行いましょう。その他、下図のような筋トレも有効です。
変形性膝関節症におすすめの食材
減量して膝への負担を減らすなら、健康的な食事が大前提です。食事の面で加えて言うなら、膝に良い影響を及ぼす食材を積極的に摂取しましょう。
例えば、骨の重要な成分であるミネラルがあげられます。カルシウムがその代表例。牛乳やチーズ、桜えびやひじきに多く含まれます。また、カルシウムと同時に摂取したいのが、同じくミネラルのひとつであるマグネシウム。ナッツ類や海草類、大豆食品に含まれていて、骨を強くする働きがあります。また、活性酸素を抑えることも膝の痛みには有効。これにはビタミンEやCが働くため、緑黄色野菜や果物もできるだけ摂取すると良いでしょう。
先日、膝痛にアボカドが良いという情報がTV番組で紹介されて話題になっているようです。実際、変形性膝関節症の患者4,822人にアボカドの脂質成分のカプセルを投与した結果、痛みの緩和や膝関節の機能改善が見られたという研究報告もあります。アボカドにはミネラルやビタミンEやCも豊富に含まれるので、その点でも膝に好ましい食材と言えるかもしれませんね。
【参考文献】
「Symptom-modifying effects of oral avocado/soybean unsaponifiables in routine treatment of knee osteoarthritis in Poland. An open, prospective observational study of patients adherent to a 6-month treatment」Piotr Głuszko, Małgorzata Stasiek. Reumatologia 2016; 54, 5: 217-226
治療間隔を正しく保つ
治療間隔については言うまでもありませんが、医師の指示を「守る」ということが大切です。治療が効いているかどうかは、やはり正しく受けてみないと判断できません。ヒアルロン酸注射なら、週1回を3〜5週、リハビリなら週2〜3回でまず行ってみてください。
膝関節のMRI検査を試してみる
診断を間違えてしまう原因のひとつに、レントゲン情報では正しく鑑別できない状態ということが考えられます。そういった場合は、MRIでの詳しい検査が必要です。レントゲンとMRIでは、検査方法も違うし、確認するターゲットも異なります。ですので、どちらの方が良いということはなく、レントゲンだけで診断可能なことは多々あります。ただ、変形性膝関節症の場合、他の疾患との鑑別や進行具合を診断します。骨の形状だけ診れば良いわけではありません。そのため、MRI検査が必要になってくるケースもあり得るのです。
MRIとレントゲンの違い
膝関節のMRI検査では、骨や軟骨、半月板、靭帯など、様々な「組織の性状」を確認する検査機器です。具体的には、骨の水分やプロテオグリカンの量、骨壊死や骨嚢胞の有無、軟骨の菲薄化や欠損、半月板の位置や変性具合、靭帯の損傷や断裂などが判明。また、関節内の出血や炎症なども画像から見て取れます。
こちらの動画は、膝のMRI画像をひざ関節症クリニックのドクターが解説したものです。軟骨下骨折や軟骨の炎症である骨髄浮腫、半月板の変性断裂、膝に水がたまる関節水腫などがどのように確認できるかご覧いただけます。
一方、レントゲンは「骨の形状」を診るための機器。骨折や骨の変形は確認できますが、MRIのような詳細情報まではレントゲンで得られません。
MRI検査の現状
MRIは脳の病気やガンの検査にも使用されます。そういった命に関わる病気へ優先されることが多く、総合病院などで検査を希望する場合、”1ヵ月待ち”なんてことも。そんな背景から、最近ではMRIやCTでの検査と診断だけを行う「メディカルスキャニング」という医療施設も登場。病気が見つかったときには、病状に合った専門の病院も紹介してくれます。
変形性膝関節症の手術や新しい治療法について知る
現状の治療法で効果が得られない場合、何らかのアクションが必要となります。手術なのか、それともまったく別の治療法なのか。どちらを選択するにしても、まずはそれがどういう治療なのかを詳しく知ることから始めましょう。
人工膝関節置換術について知る
人工膝関節置換術にしても高位脛骨骨切り術にしても、不安要素のひとつに、人工物を体内に入れることがあるかと思います。ただ、手術について詳しく分かっていないので、漠然と不安を抱いているということはありませんか?
手術推奨派ではありませんが、次のような調査報告もあります。人工膝関節置換術を受けた(股関節含む)40〜69歳の560人を対象としたアンケート結果です。「期待に対して十分な効果を感じたか」という質問に対して、期待以上は24.4%、期待通りが57.6%という回答が得られていて、82%の人から高い満足度が伺えます。また、満足している人のうち、86.9%は術後の生活の負担や注意点について医師から詳しい説明を受けたと回答。一方、どちらとも言えない・不満という人で説明を受けていたと回答したのは56.8%でした。やはり、医師とのコミュニケーションも満足度に大きく影響するようです。
【参考文献】
日本ストライカー株式会社「人工関節置換術の患者満足度に関する調査」2016年9月
変形性膝関節症治療の新しい選択肢を知る
保険診療だと、極端に言えば「ヒアルロン酸注射か人工膝関節置換術か」になり、なかなか選択が難しいかと思います。しかし、近年は医学の進歩もあり、変形性膝関節症を治療する新しい技術が登場。自分の血液に含まれる血小板の作用を利用したPRP療法に、ヒトの組織に存在する細胞の赤ちゃんを培養・移植する幹細胞治療、軟骨細胞を培養・移植する治療といった、再生医療です。
再生医療と言うと、研究段階のものと思われるかもしれませんが、少しずつ臨床応用も実施されています。再生医療等安全性確保法という法律の施行もあり、この流れは加速すると考えられます。自由診療での提供となるため、費用は100%自己負担。ただ、人工膝関節置換術の前段階に有効な治療法として、注目されていることは確かです。これらの治療を受けるかどうかは置いておいて、まずはそういう選択肢があることを知っておいて損はないでしょう。
膝の再生医療について、さらに詳しく知りたい方はこちらから!
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変形性膝関節症の治療の目的を知ろう
変形性膝関節症の治療が効かないケースでの原因を紹介しましたが、まず知っておいて欲しいのが、治療のそもそもの目的です。風邪などの場合、完治させるために治療するでしょう。ですが、変形性膝関節症においては、目的は完治ではありません。もちろん、良くしようとベストな治療を行っていますが、この病気は言わば「膝の老化」。老化で壊れた細胞や組織を元に戻す(=完治)確実な方法は、現時点では分かっていません。そのため、その効果が期待できる処置をできる限り行っているというのが、変形性膝関節症治療の実情です。
ただ、完治が無理でも治療が上手くいけば、膝の痛みなどの症状を改善させることはできます。そのためにも、今回ご紹介した内容を参考にしてみてください。