ひざ痛チャンネル編集部
2017-12-22

【PRP療法の経過と効果を検証】治療を受けられる医療機関の情報も

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【PRP療法の経過と効果を検証】治療を受けられる医療機関の情報も

MLBのLAエンゼルスでプレーする大谷翔平選手が受けていたことが報じられたPRP療法。「プロのスポーツ選手だけが受ける治療法でしょ?」と思っている人も多いのではないでしょうか。実はそんなことはありません。この記事を読めば、膝痛に悩むあなたの選択肢にもなることがお分かりいただけるはずです。

まず、PRP療法を受けたアスリートのその後から効果を検証。適応や効果のメカニズム、どんな病院で提供されているかなど、知っておきたい情報を一挙公開! これからもっと身近になるであろう治療法を、一足先に知ることができます。

PRP療法を受けたアスリートと治療後の経過

PRP療法の効果

日本ではここ数年で知られるようになったPRP療法ですが、「プロアスリートも支持する膝治療”PRP療法”に迫る」でもご紹介したように、アメリカでは2009年にアメリカンフットボール選手が治療を受けたことで認知が広がりました。それが、ピッツバーグ・スティーラーズのエースWRのハインズ・ウォード選手です。スーパーボウル開幕1ヵ月前、試合中に右ひざを負傷しましたが、PRP療法を受け早期復帰。スーパーボウルではチームを3年ぶりの優勝へと導きました。

また、陸上のウサイン・ボルト選手も過去、右膝にPRP療法を行っていたことが報じられています。方法としては患部に直接PRPを注射するという簡単なものですが、プロアスリートが治療を受けたというニュースは耳にしても、その後についてはあまり触れられていません。そこで、この治療を受けた野球選手を何人かピックアップ。膝痛だけに限りませんが、その後を見てみましょう。

田中将大選手

日本人にPRPを認知させたのは彼、と言っても過言ではないでしょう。MLBのNYヤンキースの投手、田中将大選手。彼は2014年7月、右肘靭帯の部分断裂と診断されました。MLBで肘の靭帯断裂の治療法と言えば、メスを使った靭帯再建手術「トミー・ジョン手術」が主流でしたが、これは復帰までに1年以上を要する治療法。きっと、こういった背景や肘にメスを入れるリスク、部分断裂だったことなどを考慮したのでしょう。田中選手はPRP療法を選択。7月14日に治療を受け、9月21日に復帰しています。

その後も安定した活躍を見せ、2017年9月のオリオールズ戦では150勝をマークしました。

糸井嘉男選手

田中選手がPRP療法を受けた翌年、NBLでもこの治療法を選択した選手がいました。それが当時オリックス・バッファローズで活躍していた糸井外野手(現阪神タイガース)。2014年までは打率3割を6年続けてキープしていましたが、2015年には.262とそれが途切れることに。そのオフシーズンに痛みに悩まされていた左膝の古傷にPRP療法を行いました。そして次シーズンには、史上最年長での盗塁王獲得、7度目のゴールデングラブ受賞など、輝かしい成績を残しています。

糸井選手の場合、PRP療法と合わせて、オフに内転筋や腸腰筋の強化を徹底したとのこと。膝に負担のかかりにくい体づくりを同時に行ったことも、膝痛改善の要因のひとつとして考えられるでしょう。

岩隈久志選手

PRP療法も、すべてを治療できるわけではありません。2017年に治療を受けたMLBの岩隈久志投手(シアトルマリナーズ)のケースがそうでした。

右肩炎症で故障者リスト入りした岩隈選手は、抗炎症作用のあるコルチゾン注射とPRP療法を7月に実施したとのこと。ただ、期待していた効果は得られず、9月には手術を行ったという報道がありました。肩関節には壊死した部分があったそうで、思っていたよりも重症だったようです。このように、ダメージの程度によっては、組織修復や痛みの改善効果が得られない場合もあります。

 

PRP療法の効果が期待できる疾患は?

PRP療法の適応

先述の選手情報は報道を参考にしているので野球に偏ってしまいましたが、PRP療法は他のスポーツでも治療に取り入れられています。また、スポーツ障害以外に、関節炎の治療報告も。どんな疾患に有効なのか、まとめてみました。

適応1:スポーツ障害

靭帯や腱の炎症治療が主な対象です。膝の疾患では、ジャンパー膝(膝蓋靭帯炎)やランナー膝(腸脛靭帯炎)など、その他の部位だとテニス肘やゴルフ肘、肩腱板の炎症、アキレス腱炎などに応用されています。実際に、ジャンパー膝を治療した37歳の男性は「保険のきかない治療のため不安がありましたが、海外では有名だったので、もっと早く行っておけばよかったと思いました。効果が出るまで時間がかかると思っていましたが、1週間で実感することができて良かったです」と喜びの声を上げていました。

従来、こういった炎症の治療にはステロイド注射を行うのが主流でした。ただ、テニス肘に対してPRP療法とステロイド注射を用いたところ、2年間の追跡調査においても前者がより高い効果を示したという報告もあります[1]。さらに、冒頭であげたスポーツ選手の実例でも分かるように、軽度であれば靭帯損傷のケースでも効果が得られることは少なくありません。現在では半月板損傷の手術のひとつ、半月板縫合術に併用することで縫合部分の修復が早まるかどうか、という研究もされています。

[1]「Ongoing positive effect of platelet-rich plasma versus corticosteroid injection in lateral epicondylitis: a double-blind randomized controlled trial with 2-year follow-up.」Gosens T, Peerbooms JC, van Laar W, den Oudsten BL. Am J Sports Med. 2011 Jun;39(6):1200-8.

適応2:変形性膝関節症

膝に関節炎が起きる原因の代表格とも言える変形性膝関節症においても、PRPに期待を持てる臨床試験結果が報告されています。どんなことで期待できるかと言うと、まず膝関節内のヒアルロン酸が増加していたこと。その反面炎症に関係する物質は減少していたそうです。当院で変形性膝関節症を治療した71歳の女性は「整形外科で、医師から人工関節の手術の提案を受け、リスクを考え手術しないで治す方法を探していました。PRP療法には副作用も全然なくて、人工関節の手術を受けなくても現状症状を維持できています」と話していました。

PRPとヒアルロン酸注射とを比較した試験では、24週までの経過を見て、4人の報告者のうち3人はPRPの有効性を示唆しています[2]。

[2]「変形性膝関節症に対する多血小板血漿関節内注射治療」吉岡友和ほか 整・災害 57: 91001-1009; 2014

 

PRP療法の効果のメカニズム

PRPは自分の血液から抽出した、血小板の濃縮液です。血小板に止血作用があることを知っている人は多いと思いますが、実はそれだけではありません。同時に様々な成長因子(グロスファクター)を分泌。コラーゲンをつくったり、血管や皮膚をつくったり、骨細胞を刺激したりと、成長因子の種類によって役割は違いますが、細胞の増殖を促進する作用で自然治癒能力が発揮されているのです。

血小板を濃縮したPRPに含まれる成長因子は、なんと通常の3〜5倍! 患部に注射されたPRPが作用することで、損傷した組織の修復や炎症の抑制、痛みの緩和といった効果が期待できるというわけです。

PRP療法で分泌される成長因子

 

PRP療法について知っておきたいこと

PRP療法は採血と注射だけの簡単なもので、入院は不要。また、この治療を受けたからといって、生活に何か制限が出ることもありません。いつも通りに過ごしてOKです。ただ、事前に知っておくべきことがあります。

注射後、3〜4日は反応痛が起きる可能性

PRP療法後の膝の痛み

自己修復を促すことが目的のPRP療法。ですが、同時に痛みの反応を引き起こすことがあります。ときには、腫れが生じることも。副作用のリスクが低いPRP療法において、気になる点をあげるとすればこの点でしょう。

痛みが出る場合、注射後から少しずつ強まり、翌日がピーク。徐々に治まっていきますが、3〜4日ほどは気になるかもしれません。ただ、日常生活であれば、処方されるであろう鎮痛薬の服用でコントロールできる範囲なのでご安心ください。1〜2週間ほどで痛みは緩和されるでしょう。

この痛みは修復過程で起こるものと言われていますが、白血球の含有や塩化カルシウムの添加が関係するという見解も。そのため痛みの程度には個人差があると考えられます。

余談ですが、冒頭で紹介した糸井選手は、膝に40本(!)ものPRPを注射したそうで、「あの痛みはやった人でないと分からんっすよ」と、その痛みをマスコミに語っていました。でも、通常はそんなに打つことはありませんから、痛みも許容範囲内とお考えください。

注射後は様子を見ながらリハビリ

PRP療法後のリハビリ

注射後に身体を動かすことも治療の一貫です。ずっと何もしないでいると、関節が拘縮(固まってしまうこと)し、動きづらくなるリスクも考えられるため、少しずつでも動かしているほうが、早期の機能回復が期待できます。

スタートは軽いストレッチから。それに体が慣れてきたら、少しずつ運動の強度をアップしていきます。

完治するには2~3回PRPを注射することも

複数回

話題の治療法なのだから、1回で完治すると思っている人もいるでしょう。確かに、扱っている病院ではそれを目指していると思います。1回の治療であっても、ダメージを負った組織が修復すれば、効果が切れてまた元に戻るようなことはないので、完治となります。

ただ、組織の損傷の度合いや範囲によっては、1回では修復しきれない場合も。そういったケースでは、症状を見ながら追加注入するか、医師が適宜判断。完治させるためにどのくらいの量のPRPを注入するかの判断も関係してくると考えられます。

費用は自己負担

PRP療法は保険適応外の治療法です。そのため治療における費用は、自己負担10割。扱っている病院によって料金にはばらつきがあり、数万円から何十万までの幅があります。いくつかの病院の料金表を見てみたところ、5万円~10万円前後で提供している施設が多いようです。ただし、1回の治療あたりPRPを何本注射するかによっても料金が変わってきます。

 

PRP療法はどこで受けられるのか

PRP療法は、どの病院の整形外科でも受けられる治療ではありません。保険適応外の自由診療(費用が100%自己負担)ということもありますが、厚生労働大臣に許可を得なければ提供できないとする「再生医療等安全性確保法」が、2014年に施行されました。以前は医師の裁量で扱うことが許されていましたが、この法律の対象になったことで、許可なく提供することが違法となったのです。これにより、PRP療法を行う病院は減ったかもしれません。ただ、専門委員会の審査を受け、厚生労働大臣の許可を得た病院のみに絞られたことで、安全性は確保されたと言えるでしょう。

PRP療法を正式に扱う病院の見つけ方

整形分野だけでなく歯科分野や美容分野の医療施設も含まれますが、許可を得た病院かどうかは、厚生労働省の専門ページで確認できます。申請は3つの種類に分類。腱や靭帯、筋肉といった皮下への注入を目的とする場合は第三種、関節炎や半月板を対象とした関節内への注入であれば、第二種となります。
※PRPをさらに濃縮するPRP-FDという治療法もありますが、こちらは再生医療法の対象外なので、扱っていてもこちらのサイトに病院名は掲載されていません。

 

どう応用するかは医師の判断に委ねられる

PRP療法は良い結果を得られた症例も多数見受けられ、先進的な治療法のひとつではあります。ただ、具体的な治療法とそれで得られる治療効果はまだ定まっていません。田中投手が所属するヤンキースの主治医も、当時こう話しています。「PRP療法が機能することは知っているが、いまだ我々が掴めていないのは、どのくらいの量が適切であるかだ。1回の注射で十分なのか? 2回の方がいいのか? 3回は多すぎか?」。そう、注入量や回数で結果が変わる可能性もあるということ。法律でPRPの安全性は確保されていますが、その効果については、やはりまだ医師の知識や経験に委ねらる治療法と言えます。

【参考文献】
「田中将大が受けているPRP療法って何? ヤンキース主治医がその効果を語る」ベースボール専門メディア Full-Count

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