ひざ痛チャンネル編集部
2017-11-24

膝痛に新治療が続々登場!知っておくべき再生医療の注目ポイント

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膝痛に新治療が続々登場!知っておくべき再生医療の注目ポイント

膝痛の治療法と言えば、何を思い浮かべますか? ヒアルロン酸注射やステロイド注射でしょうか? 人工関節置換術や骨切り術でしょうか? 数年前まではそれらの治療法がすべてでしたが、今後は新しい治療法がどんどん増えると予想されます。

再生医療がその最たる例。「でも、再生医療って大学で研究されているもので、とても身近には思えない……」という方もいるでしょう。確かにまだ研究段階のものもありますが、中には自由診療ですでに一般にも提供されていたり、保険が適応になっているものも!

自分の膝に合った治療法を見逃さないためにも、どんなものがあるのかを始め、再生医療の3つのポイントを今のうちにチェックしておきましょう。

 

再生医療ってどんな医療?

再生医療とは

最近、耳にする機会も増えてきた「再生医療」という言葉。ケガや病気で失った体の一部を、細胞や組織の移植で再生させ修復する医療のことを言います。よく例えられるのが、切れてしまってもまた生えてくる、トカゲのしっぽ。こんな自己再生力を人間は持ち合わせていませんが、それに近しい現象を医療のチカラで可能にするのが再生医療というわけです。

膝に関して言えば、損傷した軟骨や骨を再生し、正常な膝関節を取り戻す効果が期待できる。そんな治療法が、近年実際に臨床の現場にも登場するようになりました。

 

point1:膝痛の治療に応用される再生医療の種類

膝痛の治療に有効とされる再生医療は、具体的にどのようなものがあるのでしょうか? その種類は、「血小板」を活用したもの、「幹細胞」を活用したもの、「軟骨細胞」を活用したものの3タイプに分けられます。

 

血小板の活用で膝痛を治療する方法

血小板とPRP治療

血小板はご存知の通り、出血を止める働きを持つ血液細胞。この血小板がたくさん含まれる血液成分には、治癒を早める効果が期待できるとして、1970年代から臨床に応用されています。

それが、PRP(多血小板血漿)療法。2014年にヤンキースの田中将大投手が肘のケガに選択した、あの治療ですね。整形外科領域では靭帯の損傷などスポーツ障害への治療が多いですが、変形性膝関節症の治療にも用いられています。

 

PRPを使った膝痛治療

PRPは血小板を濃縮した液体です。これには、細胞を増やす作用を持つ成長因子が通常の3〜5倍もの濃度で含まれています。そのため、PRPを患部に注入することで、組織の修復を促進する効果が期待できるのです。

成長因子と言っても、一種類ではありません。詳しくは「プロアスリートも支持する膝痛治療PRP療法のすべてに迫る」をご覧いただければと思いますが、PRP療法によって細胞を増殖したり、血管をつくったり、コラーゲンを産生したりと、ダメージを修復する様々な作用を生み出すことができます。

PRP療法で分泌される成長因子

 

幹細胞の活用で膝痛を治療する方法

幹細胞を使った膝痛治療

幹細胞とは、骨や軟骨、血管、臓器などにも分化(変身)することのできる特殊な細胞です。京都大学の山中教授がノーベル賞を受賞した、iPS細胞も幹細胞のひとつ。こちらは人工的につくられる外能性幹細胞で、臨床応用にはまだまだ研究を重ねる必要がありそうです。

一方で、そもそも人間の体の中に存在する体性幹細胞には、実際に臨床応用されるものも。例えば、骨髄由来の幹細胞は、血球系の細胞に分化することができることから、白血病治療に応用される幹細胞です。肝心の膝関節の治療はと言うと、脂肪由来幹細胞と滑膜由来幹細胞を応用した治療法が注目されています。

 

脂肪由来幹細胞を応用した膝痛治療

脂肪組織にはそもそも豊富な幹細胞が存在していて、骨髄由来の100〜1000倍の量を採取できると言われています。2000年初頭に発見された幹細胞で、採取の容易さや多彩な分化能から一躍注目をあびました。その後、世界中で熱心に研究され続けている幹細胞です。応用は膝関節が他の部位の疾患より一歩抜きん出ているという印象で、実際の効果としては抗炎症や疼痛抑制作用による痛みの軽減が確認されています。また、少数ではありますが、軟骨の修復が期待できるような報告も! 自由診療ではありますが、主に変形性膝関節症の治療法として一般的に提供されている点も特徴です。

その方法は、脂肪組織から幹細胞を含む細胞群を抽出して関節内に注入する方法(非培養)と、幹細胞を培養してから注入する方法の2種類。前者には、セリューションという機器と使用した「SVF幹細胞治療」や間質血管濃縮自己脂肪細胞群を用いた「SCAFF天然関節治療」などがあります。また後者では、セルソースという再生医療の事業化を手掛けるバイオテクノロジー企業が、培養の受託サービスを2017年6月に開始。今後の様々な病院に広がっていくことが期待されます。ちなみに、どの治療法も膝を切開することはなく、入院の必要もありません。

培養幹細胞治療の流れ

 

滑膜由来幹細胞を応用した膝痛治療

滑膜とは、膝関節を覆っている関節包の内側の膜。この部分に存在する幹細胞にも、膝関節を治療する効果が認められています。

変形性膝関節症に対しては、ラットの実験結果ではありますが、進行と予防に成功したという報告を東京医科歯科大学の研究グループが2016年に発表。滑膜幹細胞が、軟骨の保護や炎症抑制の作用を持つ因子を生み出すことが明らかとなりました。また2017年8月からは、半月板損傷に対しての治験が、同大学付属病院でスタートしています。

方法は滑膜由来幹細胞を膝から採取して培養後、患部に注入で移植するというもの。「半月板損傷の2つの手術はどう違う?回復期間から費用までの全知識」で触れたように、半月板損傷の手術には切除術と縫合術の2種類がありますが、約80%は切除術と言われています。この半月板の一部を失うリスクを回避する方法として、治験の成果に注目が寄せられているのです。

半月板損傷を治療する滑膜由来幹細胞の移植術

出典:国立研究開発法人日本医療研究開発機構

 

軟骨細胞の活用で膝痛を治療する方法

軟骨細胞

通常のケガなら血液から損傷を修復するという自然治癒に必要な成分が送られるのですが、軟骨には血流がありません。そのため、事故やケガで欠けたり、加齢ですり減ったりしても、軟骨が自然に再生されることはありません。そこで、軟骨がダメージを受けたなら軟骨を移植しようという考えから生まれたのが、こちらの再生医療です。

 

自家培養軟骨移植による膝痛治療

自分の膝関節から、少しだけ採取した軟骨組織を素に培養した軟骨細胞を、膝に移植するという治療法です。培養という技術で軟骨細胞をたくさん増やせるので、広範囲の欠損にも有効で、痛みの軽減という効果が確認されています。

この培養軟骨の治療法、スポーツや事故などで軟骨を損傷する外傷性軟骨欠損症と、小中学生に多い軟骨がはがれ落ちる病気の離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の4cm2 以上軟骨が欠損しているケースに限られますが、2013年4月から保険適応となりました。

膝痛治療の自家培養軟骨移植術

出典:J-TEC

 

軟骨細胞をシートにして移植する膝痛治療

自家培養軟骨移植は培養した軟骨をそのまま移植する方法ですが、軟骨細胞をシート状にして欠損部分に貼るという治療法もあります。主に変形性膝関節症への応用を目的に研究が進んでいて、現在、東海大学の佐藤教授を中心に臨床研究が行われているところです。順調にいけば近いうちに自由診療で受けられるようになるかもしれません。

また、2017年2月には、乳児の軟骨から作成した細胞シートを50代男性の膝関節に使用するということも行われていて、他人の細胞でも自分の細胞同様に軟骨が再生されるか注目を集めています。また、増殖力の弱い高齢の患者本人の細胞よりも、こどもの細胞の方がシートの作成が短期間だったようです。確かに細胞も年を取りますから、若い方が再生力が高いと考えられますよね。ちなみにこの実験では、先天性の病気の治療で手術するこどもから軟骨を採取し、細胞シートを作成しています。

軟骨細胞シートと再生医療

出典:東海大学

 

point2:膝痛の新治療があまり知られていない理由

再生医療とドラッグラグ

臨床応用されている膝痛の再生医療の中で、保険が適用されているのは自家培養軟骨移植術のみ。それも疾患が2つに限られています。つまり、他の治療法は受けられたとしても自己負担ということです。なぜ同じ膝痛の治療法なのに、違いがあるのか。その理由は、国へ申請して審査を受け、許可されたら保険が適用されるという流れにあります。

では申請すればいいのでは? と思われるかもしれませんが、厳正に審査する必要があるため、これにはとても長い時間が必要です。いくら有効性が認められている治療であっても、保険診療でなければ提供される機会はぐんと少なくなります。ただ、膝の痛み、特に変形性膝関節症などはそんな間にもどんどん進行してしまいます。そう考えると、自由診療であれ、選択肢を知っているかどうかが健康寿命をも大きく左右すると言えるかもしれません。

 

point3:スピードアップする膝痛の新治療の開発

普及が加速する再生医療

すでにお話したように、新治療をスピーディーに提供する方法として、自由診療という方法があります。ただ、整形外科領域においては実際に保険適用外の治療が一般的に行われることは稀でした。ですが、2014年11月に施行された「再生医療等安全性確保法」で状況は大きな動きを見せます。これまでは医師の裁量によって提供が許されていましたが、再生医療を提供する場合は自由診療であっても、国への申請と許可が必要になったのです。

こうして、先進的な治療の安全性が確保され始めたことで、再生医療研究やその事業化など、開発周辺の動きが加速化。臨床応用もスピードアップしました。つまり、これまで注射か手術かの二択だった膝の治療に、自由診療ではありますが、どんどん新しく有効な選択肢が増えることが予想されるのです。

今回ご紹介したような再生医療のニュースもここ最近、頻繁に報じられていて、もう再生医療は遠い世界の治療法ではなくなりつつあります。ぜひ、期待を込めて今後も動向をウォッチしてみてください。

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