ひざ痛チャンネル編集部

効果は?副作用は!?変形性関節症の新治療レポート【2017年版】

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効果は?副作用は!?変形性関節症の新治療レポート【2017年版】

ヒアルロン酸注射が効かなくなってきたけど、人工関節には抵抗が……。人工関節をすすめられているけど、踏ん切りがつかない……。こんな方、多いのではないでしょうか?

でもそんな方に朗報です! 人工関節で膝を手術する前に有効と話題の、変形性膝関節症の新治療があります。特に注目されるのが幹細胞治療。ただ、気になるのはその効果と安全性でしょう。

そこで、信頼できる海外のレポートを分かりやすくご紹介します。しかも、情報は最新の2017年版! この結果を知ることが、変形性膝関節症の治療法の悩みから抜け出す第一歩となるはずです。

 

実は身近な幹細胞! 変形性膝関節症にどう効くの?

幹細胞に期待できる変形性膝関節症の改善効果

近年話題に上ることも多い膝痛の新治療。なかでも、変形性膝関節症に対する最も新しい治療法の1つが、関節内への間葉系幹細胞注入療法。「いきなり難しい専門用語が出てきた!」と思われたかもしれませんが、間葉系幹細胞は実はとっても身近な細胞なんですよ。なぜなら、ヒトの骨髄や脂肪、滑膜、筋肉、臍帯血、末梢血、腱、軟骨などに存在する細胞だから。このようにヒトの体から得ることができる細胞が、再生医療に応用される時代となってきたわけです。実際に「膝痛に新治療が続々登場!知っておくべき再生医療3ポイント」で紹介したように、脂肪由来幹細胞を培養して注入する方法は、すでに臨床での提供がスタートしています。

そもそも幹細胞とは、自らを複製(分身)する能力と、特定の細胞に分化(変身)する能力を持つ万能細胞。膝関節内にこの幹細胞を注入して期待される効果は大きく2つあると考えられています。1つは注入した幹細胞が直接軟骨細胞に分化して、関節軟骨を再生するという効果。もう1つは注入した幹細胞が患者の組織修復を促すという効果です。

【参考文献】
「細胞関節内注射法−臨床研究における有効性・安全性のエビデンス−」安井行彦ほか;関節外科Vol36,No.12,2017

 

机上の空論じゃない! 変形性膝関節症への有効性の証拠

期待されていることは分かったけど、本当にその効果が得られるのか、気になりますよね。それが分かるのが、今回ご紹介する2017年に発表された研究報告です。

海外のものになりますが、タイトルを日本語で直訳すると「メタアナリシス: 間葉系幹細胞を利用した骨関節炎治療における有効性と安全性」。メタアナリシスとは、過去に行われた複数の研究データから信頼できるものをまとめて、解析したもの。世界的に見ても、同じ治療方法による臨床試験はまだまだ少人数でしか行われていません。そのためこの研究者たちは、世界各国で実施された幹細胞による関節炎治療の臨床試験結果を精査しました。可能な限り評価項目を合わせた場合にも、変形性膝関節症への有効性が、また安全性が認められるのかを検証しているというわけです。

【参考文献】
「Clinical efficacy and safety of mesenchymal stem cell transplantation for osteoarthritis treatment: A meta-analysis」
Yubo M1, Yanyan L2, Li L3, Tao S4, Bo L1, Lin C5. PLoS One. 2017 Apr 27;12(4):e0175449. doi: 10.1371/journal.pone.0175449. eCollection 2017.

 

変形性膝関節症への有効性が6つの評価基準から明らかに

精査した臨床試験は、全部で84にのぼります。そのうち「無作為に被験者が登録されている」「治療が終了するまで自身が受けている治療方法が知らされない」「フォローアップ調査が定期的」等の条件が当てはまる、11試験が選ばれ評価検討されました。

11の試験で、変形性膝関節症の患者は582人。平均年齢は32〜57歳で、男性患者の割合は25〜62%。9つの試験で骨髄由来幹細胞、2つの試験で脂肪由来幹細胞、1つの試験で末梢血幹細胞が使用されています。

幹細胞治療で変形性膝関節症の改善が確認された6つの評価スコア

選ばれた試験は、「VAS」「IKCD」「WOMAC」「Lequesne」「Lysholm」「Tegner」の6つの方法で膝の痛みの改善度(有用性)を評価。併せて治療期間中、およびフォローアップ期間における副作用などの有害事象についての情報から、安全性を評価しました。

とは言え、普通はそんな専門的な評価方法、知らないですよね。そこで、有効性の詳細を紹介するとともに、それら6つの評価方法について解説をしたいと思います。実際に整形外科で治療を受けたら実施する評価テストもあるので、知っておくと良いでしょう。

 

1 膝の痛みを簡易に数値化するVAS

Visual Analogue Scale(ビジュアル・アナログ・スケール)という方法で、VASはその頭文字からきています。これは、痛みを数値化する評価方法。100mmの水平な直線が書かれた用紙を用意し、痛みの程度がどのあたりか患者に印をつけてもらうというものです。直性は一方が痛みなし、もう一方がこれまでに経験した最大の痛みということになっていて、その長さをもって痛みの程度を数値化するという簡便な方法です。例えば、真ん中より痛みMAX寄りを付け、その長さを定規などで図ってみると「痛みなし」から65mmだったとします。すると、VAS値は6.5ということになります。

VASによる測定を定期的に行なうことや、また治療の前後に測定を繰り返すことにより、痛みの経時的変化を観察でき、治療効果を知ることも可能です。

変形性膝関節症の痛みを数値化するVAS

 

VASに見る変形性膝関節症の改善効果

では、先の研究で得られたVASの改善に関する情報をご紹介しましょう。5試験242人からVASの改善データが得られ、そのうち119人が幹細胞治療を受けています。そして、この幹細胞治療を受けた患者における24ヵ月後のVAS変化の平均値は、他と比較して5.78ポイント優位な改善が見みられました。

また、6ヶ月および12ヶ月でもVAS改善効果が確認できます。ただ、解析症例数が少ないため他の治療方法と比べ有意差があるとはされていません。

VASに見る変形性膝関節症の改善効果

 

2 アンケート結果から膝の痛みを数値化するIKDC

International Knee Documentation Committee(国際膝記録委員会)の頭文字をとった膝の痛みの評価方法。VASと違うのは、アンケート形式の質問表に答えてもらい、その回答から数値化する点です。

質問項目は、一週間に起った症状、スポーツアクティビティ、日常生活の活動状況などについての10問。質問に対して最も当てはまるものを選ぶことによって点数化されます。最低点は0点、改善がみられると点数が高くなります。

イメージしづらいと思うので、質問を1つご紹介しましょう。

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問1)ひどい膝の痛みを伴わずに行うことができる最高レベルの活動は何ですか?

□ 非常に激しい活動、ジャンプやピボットなどを伴うバスケットボールやサッカーなど

□ 激しい活動、重い身体活動、スキーやテニスなど

□ 中程度の活動、中程度の物理的な仕事、走るまたはジョギングするなど

□ 軽い活動、歩く事や家事や庭の仕事など

□ 膝の痛みのため上記の活動のいずれかを行うことができません

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下記のサイトでは、各問にチェックを入れるだけで点数化されるので、普段から自分の膝の状態を簡易診断できますよ。英語サイトにはなりますが、ブラウザの自動翻訳機能などを使えば内容を理解することはできるでしょう。

www.orthopaedicscores.com

 

IKDCに見る変形性膝関節症の改善効果

話を先の研究結果に戻します。この評価で膝の痛みが改善したという報告は、3試験177人から得られ、幹細胞治療を受けたのはうち89人。幹細胞治療群の平均変化値は6ヶ月で1.41ポイント、12ヶ月で2.21ポイント、そして24ヵ月で4.89ポイントアップ! いずれも統計学的に優位な改善が見られました。

IKDCに見る変形性膝関節症の改善効果

3 膝の痛み以外の症状や運動機能も測定するWOMAC

Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(ウェスタンオンタリオとマクマスター大学の変形性関節症指数)の略でWOMAC。膝痛の他、腰痛、関節リウマチなどの評価にも使用されています。

WOMACは、痛みについて5問(スコア範囲0-20)、こわばりについて2問(スコア範囲0-8)、身体機能について17問(スコア範囲0-68)を測定。下記のような質問形式で展開されます。

———-

問1)膝の痛みについて、最も当てはまる数字に〇をつけてください。

1=痛み無し、2=軽い痛み、2=中くらいの痛み、4=強い痛み、5=非常に激しい痛み

ウォーキング 1,2,3,4,5

階段の昇り降り 1,2,3,4,5

夜間の痛み 1,2,3,4,5

座って休んでいるときの痛み 1,2,3,4,5

立って体重がかかっているとき 1,2,3,4,5

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WOMACに見る変形性膝関節症の改善効果

ピックアップした研究からWOMAC改善に関する情報は、2試験110人。幹細胞治療55人とヒアルロン酸治療55人との比較でした。WOMAC値を比較してみると、11.05ポイントの優位な改善結果が幹細胞治療で確認できました。また、この差は同様の条件で改めて試験をした場合でも、やはり同じような結果が得られることが再現性検定の結果から分かっています。

WOMACに見る変形性膝関節症の改善効果

 

4 膝の痛みと機能の総合評価を表すLequesneスコア

1982年にフランス人のLequesneによって発表された、疼痛と関節機能の総合指標です。残念ながら日本語版がないので、国内ではあまり使用されていません。疼痛(不快感)、最大歩行距離、ADL(日常の生活動作)の3つのカテゴリーからなり、それぞれ8点満点。全体のスコア24点満点で、点数が高いほど関節の結構状態が悪いとする評価です。

 

Lequesneスコアに見る変形性膝関節症の改善効果

Lequesneの数値において改善が見られたとする研究結果は、2試験102人から得られていて、半分の51人が幹細胞治療群ということでした。スコア変化の平均値は、-5.32と状態が良くなっていて、統計学的にも変形性膝関節症の治療として有意だったことが分かっています。

Lequesneスコアに見る変形性膝関節症の改善効果

 

5 症状や日常への障害を数値化したLysholm膝スコア

痛み(〜25点)、不安定(〜25点)、ロッキング(〜15点)、腫れ(〜10点)、肢体不自由(〜5点)、階段登り(〜10点)、しゃがむ(〜5点)、サポートが必要(〜5点)といった全8項目。この合計スコア0〜100の範囲で、膝関節の状態を評価します。スコアが高いほど症状や障害が少なく、より良い結果を示しているというわけです。

 

Lysholm膝スコアに見る変形性膝関節症の改善効果

先の研究論文によれば、この方法による改善の情報は6試験356人から得られていて、うち幹細胞治療は176人です。他のどの治療法でも改善が見られましたが、スコアを比較すると治療後6ヵ月で2.21、12ヶ月で2.02ポイントの差。治療24ヵ月後の平均変化値の差は7.96ポイントと幹細胞治療優位に広がっていました。

Lysholm膝スコアに見る変形性膝関節症の改善効果

 

6 Tegner活動スケール

Tegner活動スケールは、活動レベル0(疾病により活動できない状態)からレベル10(非常に高いレベルの競技スポーツができる状態)までの数値スケールです。10点満点で点数が高いほど状態が良いと評価することができます。

 

Tegner活動スケールに見る変形性膝関節症の改善効果

このスケールに関する情報は3試験192人から得られて、うち半分の96人が幹細胞による治療を受けていました。結果は、6ヶ月後の段階では幹細胞治療による活動レベルの改善はあまり見られていないが、12ヶ月後、24ヵ月後になると、幹細胞治療にはそれ以外の治療に比べて、有意差をもった数値の増加が見られました。

Tegner活動スケールに見る変形性膝関節症の改善効果

 

安全性もシロ! 変形性膝関節症の新治療の可能性

今回ご紹介した研究報告には、注射部位の痛み、持続性の出血、膝の腫れ、膝の温熱、骨折、膝の動きへの支障、膝の感染、神経系の障害、急性心筋梗塞、腸閉塞などの有害事象が示されていました。ただし、幹細胞治療群とそれ以外の治療群との間に、その発生率の統計的な差はなし。また、幹細胞治療に関連する重篤な副作用発生もありませんでした。これにより、報告では「変形性膝関節症に対する幹細胞治療は、安全だと思われる」いう見解が述べられています。

つまり、変形性膝関節症への幹細胞療法は、各評価スコアの向上という有効性(VAS、WOMACおよびLequesneスコアの有意な低下、IKDC、Lysholm、Tegnerのスコア上昇)に加え、高い安全性が確認されたという事になります。メカニズムや治療方法などに課題もあり、より大きなサンプルサイズの臨床試験で評価すべきとのまとめもありましたが、間葉系幹細胞を活用した治療は大きな可能性があり、それに対する期待が膨らみますね!

 

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