ひざ痛チャンネル編集部
2017-12-07

子供の「膝が痛い」は成長痛じゃない場合も。原因と病院選びのコツ

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子供の「膝が痛い」は成長痛じゃない場合も。原因と病院選びのコツ

子供から膝が痛いと言われたお母さん。「成長痛かな?」と思いつつも、確信がないから不安に思ったりしていませんか? そんなもやもやした気持ちは今日まで。読めば、子供のためにどう動けばいいか、もう分かるはずです。

不安をかき立てる靄を払うには、まず原因を知ることから。その後に気になる病院や医師選びのポイントまで、順を追ってご紹介します。

そもそも「成長痛」ってなに?

成長痛と言うと、身長が急に伸びることが原因と思っている人も多いのではないでしょうか。ただ、骨の成長だけで足が痛くなるとは考えにくいのです。実際、成長痛と思われる症状が現れる多くは、4〜8歳くらいまでの子供の10〜20%程度。骨の成長と関係あるなら、もっと高い割合のはずでしょう。中学生くらいに大きく成長する子供も少なくありませんから、つじつまが合いませんよね。

【参考文献】「ネルソン小児科学」エルゼビア・ジャパン
著=Robert M. Kliegman, MD/Bonita F. Stanton, MD/Joseph W. St. Geme III, MD/Nina F. Schor, MD, PhD/Richard E. Behrman, MD
監修=衞藤義勝(東京慈恵会医科大学名誉教授/財団法人脳神経疾患研究所先端医療研究センター長)

成長痛の症状と原因

成長痛の症状と原因

実は成長痛、医学的に明確な症状や診断基準があるわけではないのです。痛くなるのも、ふくらはぎやすねが多いのですが、膝や太もも、足首になど、人によって症状は異なります。ただ、症状が見られるタイミングが特徴的。夕方から夜、特に寝ているときに膝が痛くなる子どもが多く、朝になると平気なことが多いのです。

そもそも成長痛だとすると、レントゲンなどの検査を受けても特に異常は見られません。では、なぜ痛みが生じるのか。それには、下記のような原因が考えられます。

日中の疲れの影響

子供は骨や筋肉、靭帯などが未発達でも、運動量は大人以上。セーブするということを知りませんから、かなりの疲労が筋肉や靭帯に蓄積されていることが往々にしてあります。この疲れから、しびれや痛みが出ることがあるのです。

こういった症状は活動的な日中よりも、安静時である夜に感じやすいため、寝ているときに痛みを訴える子供が多いと言えます。

精神面の影響

不安やストレスがきっかけで、膝の痛みが増すということも考えられます。なぜなら、痛みの抑制に働く脳内物質のドーパミンは、ストレスの影響で分泌されなくなってしまうことがあるから。そのため、膝が痛いことへの不安や、弟や妹が生まれるなどの環境の変化(かまってもらえなくなる状況)、友達との関係が上手くいっていないなどで生じるストレスが、子供の膝の痛みに影響しているとも考えられるのです。

異常がない子供の膝痛、成長痛の対処法

成長痛の対処法はスキンシップ

このような原因で膝が痛くなる成長痛は、疲れを癒すこと、安心感を与えることで改善が期待できます。例えば、お母さんが寝る前に優しくマッサージしてあげるというのも効果的。安心させることが目的ですから、特別なテクニックは必要ありません。さすってあげるくらいでも十分だと言えるでしょう。要はスキンシップが大事ということですね。

ただし、頻繁に痛がっていたり長引いたりするようであれば、やはり本当に異常がないかどうかの検査が必要です。小児科を考える人も多いようですが、成長痛であってもなくても、しっかり原因をつきとめたいなら整形外科を受診しましょう。

 

成長痛ではない子供の膝の痛み

成長期の子供に多く見られる、膝の疾患や病気というものがあります。成長痛の症状と違いを感じるようなら、それらが膝の痛みの原因という可能性も……。なかでも子供に多く見られるものを3つご紹介しましょう。

半月板の形が関係する「円盤状半月」

正常な半月板

通常、半月板(水色部分)はこのように中央が空洞になっている

膝関節には半月板と呼ばれる軟骨組織があり、膝に加わる衝撃を吸収したり、関節の動きをスムーズにする働きで骨を守っています。半月板とは言っても、通常は三日月のような中央に空洞のあるC型の形状。それが先天的な影響で本当に半月状、つまり中央に空洞がないケースが円盤状半月です。

これ自体が病気というわけではなく、確かに円盤状半月でも膝が痛くならない人もいます。ただ、通常の半月板よりも、スポーツなどの外的な衝撃で半月板が損傷しやすいのです。先にも言ったように、幼児や小学生は筋肉が未発達ながらアクティブなので、よりそういった傾向が強いと言えるでしょう。また、大きく分厚い半月板が引っ掛かることで、子供の場合は損傷がなくても膝を動かしづらいと感じることがあります。円盤状半月の子供に現れやすい症状としては、次のようなものが挙げられます。

・縄跳びや長距離走の後に膝が痛い
・膝にひっかかりを感じる(キャッチング)

膝の内側が痛い「膝蓋骨亜脱臼」

膝蓋骨亜脱臼とは

通常、膝のお皿(膝蓋骨)は膝の真ん中に位置していますが、これが外側に外れてしまう疾患です。原因としては、膝蓋骨や大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)、膝蓋靭帯(膝蓋骨と脛の骨をつなぐ靭帯)に異常があるなど、先天的に脱臼しやすい要素を持っているケース、スポーツの衝撃で脱臼するケース、長期的な膝関節への負担で脱臼するケースなど、様々あります。

ホルモンバランスの影響で靭帯や腱や筋膜などが弛むことがあることから、思春期を迎える10代の女子に多く見られる疾患で、一度脱臼すると何度も繰り返しやすいのが特徴です。亜脱臼が起こると、下記のような症状が出やすくなります。

・膝の前側や内側が痛い
・膝が腫れる
・膝関節が動かしづらい

膝を曲げると痛い「オスグッド病」

オスグッド病とは

正式名称は、オスグッド・シュラッター病。ウェブサイトによっては成長痛の一種として説明されていたりもしますが、実は別物。確かに10~15歳くらいの子供に多いのですが、検査すれば異常が確認できるので、オスグッド病とはっきり診断されるはずです。

オスグッド病とは、膝のお皿の膝蓋骨(しつがいこつ)とすねの骨の脛骨(けいこつ)をつなぐ膝蓋靭帯の脛骨側が剥離してしまう疾患。そもそも膝の曲げ伸ばしは、太ももの筋肉である大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の伸縮運動が、膝蓋靭帯まで伝わることで脛骨を動かすというメカニズム。それが子供の場合は、まだ脛骨が軟骨から硬い骨への成長過程。激しい運動で膝蓋靭帯から脛骨にかかる負荷が大きくなると、膝蓋靭帯が脛骨の軟骨ごとはがれてしまうのです。オスグッド病の代表的な症状には、次のようなものが挙げられます。

・膝を曲げると痛い
・膝のお皿の下が痛い
・膝のお皿の下が硬く盛り上がる

 

膝以外の原因も考えられる子供の膝の痛み

「膝が痛い」と子供が言っているからと言って、原因が膝にあるとは限りません。例えば子供が膝を痛がる場合、股関節も調べるというのが鉄則。なぜなら、子供に多い股関節の疾患では、だいたいどれも膝が痛いという症状が見られるからです。また、非常に稀ではありますが、骨の病気から膝の痛みを感じることもあります。それぞれ、詳しく見ていきましょう。

肥満男児に多く見られる膝痛原因「大腿骨頭すべり症」

10~14歳くらいに起こりやすい股関節の疾患が、大腿骨頭すべり症(だいたいこっとうすべりしょう)です。女の子よりも男の子、さらに肥満児に多く見られる傾向があります。

これは、股関節に接している大腿骨の先端(の軟骨から骨に成長する部分)が後ろにすべるというもの。それに伴い、股関節や膝の他、おしりやかかとなどに痛み、もしくはびっこを引くなどの症状が現れます。

活動的な男の子に多い膝痛の原因「ペルテス病」

4~7歳に多いペルテス病。男の子の発症率は女の子の4~5倍ほどと言われていて、なかでも活動的な子供に多く見られます。

大腿骨の骨頭が壊死してしまう病気と言うと恐ろしく感じるかもしれませんが、早期に治療すれば完治させることも可能です。ただ、放置したり治療が適切でなければ、骨が変形し、後遺症が残ることも。それだけに、的確な検査と診断が重要です。股関節よりも太もも、膝の痛み、また股関節を外や内にひねりにくいなどの症状が見られます。

子供に多い骨のがん「骨肉腫」

子供の骨に発生するがんで最も多いのが、骨肉腫です。原因は詳しく分かっていませんが、10代に発症することが多く、骨の中でも約60~70%が膝関節付近で起こる言われています。初期症状は痛みと腫れ。

【参考文献】骨肉腫:国立がん研究センター 小児がん情報サービス

 

連れていくべきは病院?接骨院?

子供の膝痛は整形外科

先にご紹介した3つの膝の疾患は、運動前の動的ストレッチや運動後のケア(静的ストレッチやアイシングなど)をしっかりやることで予防できます。ただ、痛みが出ているということは、なんらかの異常があるということ。成長痛の症状であっても、先にも触れたように、長引くようなら他の異常が疑われます。そうなった場合、とにかく早期の治療がその後の明暗を分けると言っても過言ではありません。

そこでまた悩むことになるのが、どの病院に行くのか。小児科、整形外科、はたまた接骨院なんて選択肢も頭をよぎるでしょう。この場合、おすすめするのは断然、整形外科。その理由には次のことがあげられます。

小児科よりも整形外科

小児科でも親身に相談に乗ってくれるとは思います。ただ、詳しく検査できるのは整形外科。レントゲンやMRIで原因をつきとめ病態を詳しく知ることで、早期に適切な対処が可能です。先ほどお話ししたように、膝以外が原因ということもあるため、それをはっきりさせるためにも整形外科を推奨するのです。

見えない、分からないというのが不安をかきたてます。原因がはっきりして治療方針が見えれば、お母さんも子供も少しは安心できるのではないでしょうか。

接骨院より先に整形外科

まず、医師が治療を行うのが整形外科。一方、接骨院は柔術整復師が施術を行います。対象も異なり、整形外科が骨や関節、筋肉、靭帯、末梢神経まで診るのに対し、接骨院は主に捻挫や打撲などの外傷が主な施術範囲です。名称に「骨」と付くくらいだから、骨折や脱臼などにも施術している印象があるかもしれませんが、こちらは応急処置が対象となります。また、ご存知の通り、整形外科は薬の処方や注射、手術などの医療行為を行いますが、接骨院が行うのは温熱療法やマッサージなどの物理療法といった医療類似行為です。

診断を間違えると痛みが悪化することも……

このように様々な違いがありますが、膝が痛い子供を最初に連れて行くのは、しっかり検査のできる整形外科。痛みの原因をつきとめないと、正しい治療はできません。そのため、検査機器のない接骨院より整形外科に行くべきなのです。整形外科医に症状や病態を診断してもらって、相談の上で接骨院を利用するのはまったく問題ないでしょう。

ただ、最初に接骨院に行って、もし間違った見立てで施術を行った場合、膝の痛みが良くなるどころか、悪化してしまうことも否定できないため、注意してください。

 

子供の膝の痛みを任せられる病院・医師の選び方

子供を任せられる整形外科選び

整形外科を受診することにしても、どの病院に行くか迷っているお母さんも多いのではないでしょうか。そんなときは、次の内容を参考にしてみてください。

病院選びで意識すべきポイント

まず、どのように病院を探していくかのポイントを3つお教えします。

ポイント1:「小児整形外科」でなくても大丈夫

整形外科と一言に言っても、いつもの診療が高齢者か、スポーツ選手か、子供かでも専門性が違ってきます。子供の膝痛の場合、欲を言うなら、小児整形外科を掲げていたり、小児整形外科専門医が在籍する病院だと、より専門的な診断や治療が受けられると考えられます。ただ、マストな条件ではありません。なぜなら、よほどのことでなければ、適切な診断は通常の整形外科で十分に対応可能だからです。

専門医を探すよりも「まず受診」というスピード感を意識した方が良いでしょう。

ポイント2:家の近くの整形外科から選ぶ

専門性にこだわり過ぎると問題も生じます。そもそも小児専門の整形外科が都合良く近所にない場合の方が多いでしょう。つまり、通院が大変になる問題です。

特にスポーツをしている子供の場合、今後も整形外科を受診することは多いに考えられます。そう考えると、家の近くでかかりつけ医を見つけた方が、相談も気軽にできるというわけです。

ポイント3:ママ友コミュニティの口コミを参考に

今の時代、病院選びもネットの口コミを参考にすることが多いかと思います。ただ、子供の膝のことなので、周りのお母さんたちの口コミが一番有益な情報となるでしょう。きっと、医師の説明や処置、スタッフの対応などに対しても、同じ視点を持って評価しているのではないでしょうか。

こんな対応なら、別の病院を探すのもアリ

他の整形外科医を探した方がいいケース

上記のポイントに沿って近所の整形外科を受診したものの、なんだかイマイチ……ということもあるでしょう。その原因の多くは、きっとコミュニケーション面での問題。「変形性膝関節症の名医に出会う方法」でも紹介したように、アメリカでは実際に「病院で治療を受けた結果、症状が改善しない、もしくは悪化する原因の7割はコミュニケーションにある」という調査結果も発表されています。

もし次のような医師に心当たりがあるなら、セカンドオピニオンを求めることも検討した方がいいかもしれません。

【参考文献】「Doctor, Shut Up and Listen」The New York Times(JAN. 4, 2015)

話をあまり聞いてくれない

的確な治療を行うための大前提は、まず患者の声に耳を傾けること。これを怠ると不必要な検査が増えますし、最悪、正しい診断が行えないことも考えられます。それ以前に、不信感が募りますよね。そういう些細な点が子供に伝わり不安をかき立てないとも言い切れません。

説明が分かりにくい

子供の膝の状態やどうしたら良くなるのかなど、できるだけ詳しく知っておきたいですよね。本来なら医師も同じで、お母さんにきちんと説明して分かっておいて欲しいと思っています。だからこそ、言葉を噛み砕いたり、重要なところを強調したり、レントゲンやMRI検査も模型と併せて説明したりと、説明を工夫します。

ただ、残念ながらすべての整形外科医がそうとは限りません。もし分からないところを質問してもおざなりのようなら、その病院に通い続けることはおすすめしません。

堂々としていない

いばっていいる方が良いということではありません。自分の考えに一本の芯が通っている医師は、質問にもはっきり答えられるし、言動に一貫性があるもの。一方、自分に自信のない医師は、質問の答えも曖昧で、目が泳いでいるなんてことも……。こんな様子だと、正しい診断でも疑ってしまいますよね。初診の際にチェックしてみてください。

 

急に「膝が痛い!」と言われても慌てず、子供に安心感を

いかがでしたでしょうか。病院選びまで書きましたが、子供に膝が痛いと言われたら、まずは症状を観察。そして、過度な運動は控えることです。様子を見ながらも、受診は必須。平行して整形外科を標榜する近くの病院を探しましょう。言うまでもない基本かもしれませんが、知っておけば、子供の急な膝痛にも焦らず対応できます。そんなどっしり構えたお母さんが、何より子供に安心感を与えると思うのです。

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