ひざ痛チャンネル編集部
2018-06-12

大谷翔平選手の回復の可能性は?PRP療法と幹細胞治療の効果に迫る

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大谷翔平選手の回復の可能性は?PRP療法と幹細胞治療の効果に迫る

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大谷翔平選手の靭帯損傷。このニュースに大きな衝撃とショックを受けた野球ファンは少なくないでしょう。ただ、このケガに対し、大谷選手はすでに2つの治療を受けています。1つは入団前にも受けていたPRP治療。そしてもうひとつが、幹細胞を患部に注射するという治療。実はどちらの治療法も膝のケガや、変形性膝関節症の治療としても用いられている治療法なんですよ。

ということで、どんな治療法なのか、どんな効果が期待できるのか、大谷選手のケースを交えながら、分かりやすくご紹介します。

 

PRP治療とは?

膝の靭帯損傷のPRP療法

大谷翔平選手がメジャー移籍前にも受けていたのがPRP治療です。PRPとは、簡単に言うと「血小板の濃縮液」のこと。ケガで出血したときに血を固めるのが血小板の作用があることは一般的に知られていますよね。それは、組織の修復を促す成長因子という物質が、血小板の作用によって分泌されているからなんです。実際、血液に血小板が少ない人は、血が止まりにくかったり、傷が治りにくかったりということがあります。

PRP治療は、そんな血小板の作用に着目した治療法。採取した血液を加工して血小板の濃度を高めているので、細胞分裂が活性化され、期待できる組織修復の効果も高まるというわけです。大谷選手のようなスポーツ選手が受ける特別な治療と思われがちですが、厚労省からPRP治療提供の許可を受けている病院では、一般にも自由診療で提供されています。

PRP療法で分泌される成長因子

 

PRP治療の対象となるケース

次のようなケガや疾患に、PRP治療は用いられています。

 

スポーツ外傷

大谷選手がまさにこれですね。靭帯損傷の他、肉離れ、靭帯や腱の炎症などが適応となります。PRP治療を受けることで、早期回復が期待できるので、まさにアスリートの希望とマッチするわけです。

また、半月板損傷でも半月板縫合術に併用することで、縫合部分の修復が早まったという研究報告もあります。

【参考文献】
「Ongoing positive effect of platelet-rich plasma versus corticosteroid injection in lateral epicondylitis: a double-blind randomized controlled trial with 2-year follow-up.」Gosens T, Peerbooms JC, van Laar W, den Oudsten BL. Am J Sports Med. 2011 Jun;39(6):1200-8.

 

スポーツ障害

受けたばかりの負傷だけでなく、慢性化してしまった古傷というものにもPRP治療は効果を発揮します。こういったケースでは、組織が修復しづらい状況になってしまっています。そこにPRPを注射することで、自分がそもそも持っている治癒能力を高められるため、昔のケガでも修復しようとする体の反応をもう一度つくり出すことができるのです。

 

変形性膝関節症

膝関節疾患の代表格とも言えるのが、変形性膝関節症。加齢や肥満、筋力不足の他、スポーツなどでの膝の酷使やケガの影響でも発症するこの膝疾患に対しても、効果が期待できるPRP治療の臨床試験の報告があげられています。その報告では、関節内のヒアルロン酸増加や、炎症に関係する物質が減少していたそうです。

【参考文献】
「変形性膝関節症に対する多血小板血漿関節内注射治療」吉岡友和ほか 整・災害 57: 91001-1009; 2014

 

PRPの治療方法

採血と患部への注入だけで完了するPRP治療。手術や何か特別な準備が必要なわけではないので、大谷翔平選手も緊急降板した翌日にすぐ受けていましたよね。

自分の血液を少量採取し、それを専用のキットを使用し遠心分離機にかけます。こうして血小板を濃縮するわけです。あとは患部に注入するだけ。治療後の数日ほどは痛みが出る場合もありますが、PRPの作用の影響による正常な反応と言えるでしょう。

 

幹細胞治療とは?

幹細胞を使った膝痛治療

関節に対する幹細胞治療では、炎症や痛みの抑制、組織の修復といった効果が期待できます。まずは、幹細胞が何なのかについてお話しましょう。

 

いろんな細胞になることができる幹細胞。その種類は?

幹細胞とは、自分自身を複製する能力と、骨細胞や軟骨細胞、血管細胞など、他にも様々な細胞に分化(変身)する能力を持つ特殊な細胞です。そのため、再生医療業界では特に注目されていて、京都大学の山中教授がiPS細胞でノーベル賞を受賞したのも記憶に新しいところ。そう、iPS細胞も幹細胞のひとつです。代表的な幹細胞は以下の5種類があげられます。

  • 人工多能性細胞……iPS細胞。体細胞に4種の遺伝子を組み合わせて人工的につくる幹細胞。
  • 胚性幹細胞……ヒトの受精卵をソースとし、取り出した内部細胞を培養する幹細胞。
  • 造血幹細胞……骨髄の中にある幹細胞。白血病治療として実用化されていています。
  • 脂肪幹細胞……脂肪幹細胞。脂肪組織から採取するため、低侵襲かつたくさんの幹細胞を確保可能。
  • 滑膜幹細胞……関節を包む滑膜という組織から採取する幹細胞。軟骨や半月板治療の研究がメイン。

 

大谷翔平選手は「脂肪幹細胞治療を行ったのでは?」と考える理由

量が多い

上記の幹細胞の場合、大谷翔平選手は脂肪幹細胞治療を受けた可能性が高いと考えます。なぜなら、他の3つの幹細胞はまだ研究段階。一般に治療提供されていることでは造血幹細胞も可能性もゼロではありません。ただ、大谷選手の場合は、脂肪幹細胞ではないかと思えるのです。ただ、報道では「PRP治療と幹細胞注射を行った」ということしか発表されていないため、あくまで推測になりますが……。

 

理由1:脂肪幹細胞治療は低侵襲

脂肪幹細胞を抽出するための脂肪は、少し大きな注射器でお腹や太ももから吸引します。部分麻酔で採取でき、入院も必要ありません。一方、造血幹細胞の骨髄は、全身麻酔で腰の骨に針を数カ所刺して吸引する採取方法。その後の入院が必要です。血液から採取する方法もありますが、これは白血球を増やす薬の3〜4日ほどの連続注射が必要。大谷選手のように、すぐに治療を受けることはできません。体に負担のかかる方法を、現役アスリートが選択するとは考えにくいのです。

 

理由2:脂肪幹細胞はたくさん採取可能

脂肪幹細胞は脂肪から、造血幹細胞は骨の中の骨髄に存在します。それぞれ1グラムあたりに存在する幹細胞量を比較すると、脂肪から抽出できる幹細胞は骨髄の約500倍という報告もあります。侵襲の点も踏まえると、脂肪からは実に効率的に幹細胞が採取できるというわけです。

【参考文献】
「Japanese Journal of Transfusion and Cell Therapy」中山享之ら Vol.59 No.3 59(3):450―456, 2013

 

理由3:脂肪幹細胞は傷の治りが一番早い

傷の治りを早める作用が、他の幹細胞より強いという報告も。マウスの背中の傷に、胚性幹細胞と骨髄幹細胞と脂肪幹細胞を移植して治癒状況を調査したところ、脂肪幹細胞がもっとも早く、治りもキレイだったのいうのです。大谷選手の場合、グレード2の靭帯損傷でした。グレード2と言うと、通常、低周波治療や関係する筋肉のトレーニングなど、時間をかけて保存療法で対応します。ただ、それでは時間がかかりすぎるため、この傷の修復を早める作用が強い、脂肪幹細胞治療を受けたのではないかと思えるのです。

【参考文献】
「Direct comparison of the potency of human mesenchymal stem cells derived from amnion tissue, bone marrow and adipose tissue at inducing dermal fibroblast responses to cutaneous wounds」XIAOYU LIU, et.al. International Journal of Molecular Medicine 31: 407-415, 2013

 

脂肪幹細胞治療には培養する方法もある

大谷翔平選手が脂肪幹細胞を用いたとした場合、すぐの治療ということからも、採取した脂肪幹細胞をそのまま患部へ注射する方法をとったと考えます。ですが、脂肪幹細胞にはもうひとつの治療方法があるのです。

それが、採取した脂肪幹細胞を培養するというもの。脂肪においては、そもそも抽出可能な幹細胞量が多いとお話しましたが、培養することで幹細胞を抽出するための脂肪組織が少なく済みます。つまり、非培養のものより低侵襲で受けられるというわけです。どのくらいの培養が適当かという研究もすすめられていますが、当院で行った治療で培養したケースと非培養のケースを比較すると、培養した脂肪幹細胞を注入した方が痛みの軽減において高い効果を示しています。

培養に3週間ほどかかるため、大谷選手は非培養だと思うのですが、幹細胞は凍結保存しておくことも可能です。そうすると、その限りではありませんね。

培養幹細胞治療の流れ

 

大谷翔平選手が治療効果を得る可能性は?

こればかりは、靭帯損傷のグレード2という情報しかないのでなんとも言えません。ですが、スポーツ選手としては、テニス界のトップに君臨するラファエル・ナダル選手も、痛めた腰の治療としてで幹細胞の投与を行っています。2014年に行われたその治療効果は、彼の現在の活躍を見ればお分かりいただけるでしょう。また、大谷翔平選手と同じ野球選手では、読売ジャイアンツのマシソン投手も同様の治療を受けています。右肘の靭帯断裂で2度もトミー・ジョン手術を行っている彼ですが、その後受けたPRP治療と幹細胞治療については「(治療した)翌年には何も感じなかった。幹細胞注射と2度のPRPで結局、最後の手術から10年間を投げ抜いた。まさに奇跡だよ」とコメントしたとのこと。他にも、アメリカンフットボールやサッカー、バスケットボールなど、多くのスポーツ選手がPRP治療や幹細胞治療を用いている事実からも、彼らの治療への期待度を感じますね。

一ファンとして、大谷選手にも早期復帰して欲しいという希望が大きい点は否めませんが、再生医療を提供する者としても、その効果に期待しつつ続報を待ちたいところです。

 

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