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膝だけでなく他の関節も痛い、身体がだるい……。こんな症状に心当たりはありませんか? それはもしかしたら、関節リウマチという病気かもしれません。
関節リウマチは、寝たきりリスクもはらむ病気です。このように聞くと不安に感じてしまうかもしれませんが、それを防ぐためにまず知っておきたいことをまとめました。症状や原因、合併症から、日常生活での注意点や検査・診断方法といった情報を、早めにチェックしておきましょう。
関節リウマチとは?
関節リウマチは、関節内にある滑膜(かつまく)の異常により、関節に慢性的な炎症が起きる疾患です。恐ろしいのは、これが全身に現れることと、進行性であること。指、肩、膝、足など、身体中のあらゆる関節で、滑膜に炎症が起こります。炎症が続くと関節内の軟骨が破壊され、末期には骨にもダメージが及び、関節は変形。動かすことができなくなり、寝たきりや車椅子での生活を余儀なくされるケースも……。関節の炎症や身体障害は、発症後の2年間で急速に進行すると言われています。
図の緑の線が炎症、青が身体障害の度合いです。発症後1〜2年で大きく進行しているのがわかります。
関節リウマチは高齢者の病気じゃない
厚生労働省の発表によると、関節リウマチの患者数は日本全国で60〜100万人とも言われ、年々増加中。40~50代に多く、全体の約半分を占めます。しかし、高齢になるほど発症しやすいというわけではなく、65歳以上になると発症率が下がります。20~30代での発症は3割程度と、決して少なくはありません。
また、関節リウマチの発症率は女性が男性の3倍以上とされています。オアシズの大久保佳代子さんや堀ちえみさんなど、芸能人にも発症例あり。酒井若菜さんもその一人で、発症したのは19歳のときだったそうです。
関節リウマチの症状
関節リウマチは、膠原病(こうげんびょう)という総称で括られます。これは、「身体中の組織に炎症や変性が起こる慢性的な疾患」という意味。膝の痛みに限らず、全身の関節に症状が出ることや、左右の同じ関節で同様の症状が出ることが関節リウマチの特徴です。具体的な症状としては次のようなものがあります。
全身の関節の違和感
こわばり、上げにくい、曲げにくいといった違和感が、全身の関節に現れます。
全身の関節の痛み
肩、肘、手足の指、腰、股関節、膝など、全身の関節が痛みます。じっとしていても痛みが出ます。
全身の関節の腫れ
全身に関節炎が現れるため、炎症によって腫れます。
関節に水がたまる
関節の炎症で、関節内を満たす滑液(かつえき)が異常に作り出されると、水がたまることもあります。
倦怠感や微熱といった不調が続く
全身の関節が炎症を起こしているため、「なんだか体がだるいな」といった状態が続きます。
関節リウマチの原因とメカニズム(仕組み)
全身の関節に炎症や痛みを及ぼす関節リウマチ。その原因やメカニズムはどういったものなのでしょうか? 確実なものは解明されていませんが、主な原因と考えられているのが「免疫の異常」によるものです。
関節リウマチの原因は免疫の異常
免疫とは、自身の身体に入り込んだウイルスや毒素を排除するために攻撃する働きのこと。しかし関節リウマチになると、その仕組みに異常が生じて、健康な組織まで攻撃してしまうのです。
はっきりとした原因は分かっていませんが、遺伝的な要素が関係しており、過労やストレス、喫煙、感染症、出産といった環境的なきっかけが相まって発症すると考えられています。
免疫の異常による関節リウマチの発症メカニズム
人体にはマクロファージという細胞が存在します。これは、細菌などの有害物質や、不要な細胞を捕食してくれる有益な免疫細胞。しかし、自己の免疫に異常が起きると、このマクロファージが健康な細胞や組織も異物とみなし、攻撃してしまいます。これが関節リウマチの初期段階。そうして攻撃された滑膜は炎症を起こして腫れ、滑液を異常に分泌します。関節にたまる「水」とはこの滑液です。
また、炎症を起こすと、炎症性サイトカインという物質が分泌されます。サイトカインは、細胞同士がやり取りをする信号のことで、異物とみなされた細胞などを排除するときに出されるのが炎症性サイトカイン。関節リウマチでは、これが炎症を悪化させる原因になると考えられており、分泌され続けることで、やがて軟骨や骨が破壊されてしまいます。
関節リウマチの合併症
関節リウマチになると発症しやすくなる疾患には、次のようなものがあります。
貧血
関節リウマチになると、先ほどご紹介した「炎症系サイトカイン」という物質によって赤血球の産生が抑制され、貧血が起こりやすくなります。
骨粗しょう症
炎症性サイトカインなど、骨を破壊する作用を持つ物質が分泌されることで、骨が脆くなる疾患です。また、関節リウマチによる痛みが原因となって運動や日常生活に制限がかかると、筋肉は衰えます。そうして関節や骨への負担が増加することも、骨粗しょう症を併発する一因です。
シェーグレン症候群
明確な原因はわかっていませんが、免疫異常によって目や鼻、口の組織が攻撃されることで発症するとされており、国の指定難病にもなっています。全身に様々な症状が現れるのが特徴ですが、中でもドライアイ、ドライマウスが主な症状です。
間質性肺炎
間質性肺炎(かんしつせいはいえん)は、関節リウマチの患者の10〜30%に発症するとされています。炎症や損傷を起こした肺の細胞壁が厚く硬くなり、息切れや咳が続くのが主な症状です。しかし、こうした症状が全く現れず気づかれないケースも。悪化すると、肺がんを合併してしまうこともあります。
悪性関節リウマチ(血管炎)
関節リウマチの人の0.6%に現れる、予後不良(治療の経過、見通しが良くないこと)の合併症です。こちらもはっきりとした原因はわかっていませんが、血管内部の壁に炎症が起こることで発症します。38度以上の高熱や皮膚潰瘍、心膜炎など、全身に症状が現れるのが特徴です。
関節リウマチの検査方法と診断基準
ここまで関節リウマチの症状や発症メカニズムなどをご紹介しましたが、どのような検査を経て、どのような基準で診断されるのでしょうか。
関節リウマチの検査方法
一度の検査では明確な診断を下せず、繰り返し検査を行う必要がある場合もありますが、代表的なものをご紹介します。
血液検査
炎症反応や、リウマチ因子と呼ばれる物質の有無を確認します。
尿検査
痛風など、他の疾患の可能性を調べるために行われます。
X線検査
関節の隙間の有無や、骨と骨が固着していることを確認します。
関節液検査
関節液内にリウマチ因子があるかどうか確認します。また、関節液の量が著しく多い場合、炎症の影響が考えられます。
関節リウマチの診断基準
2010年、アメリカとヨーロッパのリウマチ学会が合同で、関節リウマチ診断の新たな基準を発表しました。それまでは1987年に発表された基準が用いられていましたが、2010年の新基準によって、より早期で関節リウマチを診断することが可能になりました。関節の炎症が身体の何ヶ所にあるか、どれくらいの期間、症状が続いているか、といったことを得点化し、その数値によって診断するという方法が採用されています。
関節リウマチの人が日常生活で気をつけるべきこと
現段階では「この検査で100%診断できる」というものがなく、様々な検査を組み合わせて総合的に診断されます。ただ、それでも発症後すぐに診断がつかないという場合も少なくありません。そのため、医師と相談の上、日々の生活では次のようなことに気をつけながら過ごしましょう。
睡眠の確保
十分な睡眠が取れていないと、痛みや炎症が悪化する場合があります。身体をしっかり休めるようにしてください。
禁煙
たばこが健康を害することはよく知られていますが、関節リウマチの治療においてもたばこを控えることは必須です。喫煙によって、関節リウマチの治療効果が半分以下になるというデータもあります。
肥満の解消
関節リウマチの患者で適正体重の人に比べ、肥満の人のほうが関節内の炎症性サイトカイン濃度が高かったという報告があります。肥満は関節リウマチによる炎症や痛みを悪化させる原因であると言えるでしょう。体重管理が重要です。
食事管理
関節リウマチは合併症を発症しやすく、特に貧血や骨粗しょう症のリスクが高くなります。カルシウムを多く含む乳製品や小魚、鉄を多く含むレバーなどを積極的に摂取し、食事から身体を作っていくことが大切です。
適度な運動
「関節リウマチを発症したら安静にする=何もしない」では良くありません。何もしなければ筋力は衰え、より関節に負担がかかってしまいます。場合によってはさらに痛みが増すことも。
そうならないためにも、無理をしない程度の運動をおすすめします。水中ウォーキングや散歩などが効果的。家の中をゆっくり歩き回ることや、家事をするだけでも効果があります。
関節リウマチは早期の治療が絶対!
関節リウマチは、10年、20年と放置してしまうと、関節が完全に破壊されます。最悪の場合には寝たきりになってしまう可能性もある恐ろしい疾患で、以前は不治の病とされていました。しかし、近年の研究によってメカニズムが解明され、効果的な治療薬も開発されています。完治は難しくても、関節炎の進行を食い止めることは可能になったと言えるでしょう。だからこそ、早期の治療が肝心です。
関節に痛みがあって、でもリウマチかもしれない……。もしそう迷ったら、まずは整形外科を受診してください。変形性膝関節症などの別の疾患であっても、整形外科で診断・治療が可能だからです。関節リウマチと診断された場合、より専門的な治療を行ってくれるリウマチ科、膠原病科などもあるため、そちらで治療を進めていくのがよいでしょう。