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変形性膝関節症などの関節疾患では、膝の痛みや違和感から、あまり歩かなくなる人も少なくありません。すると、次第にゆっくりとしか歩けなくなってしまいます。しかしこれ、実はとてもリスキー。重症化させないためにも適度なウォーキングが必要なのですが、理由はそれだけではありません。人の歩く速度と寿命との密接な関係、みなさんはご存知でしょうか?
今回は、その関係を示した世界の研究発表を紹介しつつ、身体と膝の健康を維持するウォーキングの工夫についてもご提案します。健康寿命が気になるあなたは、今すぐチェック!
【年齢別】歩く速度の平均値は?
歩く速度と人の寿命について詳しく見る前に、平均的な歩行速度を知っておきましょう。
少し昔のものにはなりますが『歩行の科学』(阿久津邦男 1975 不昧堂出版)のデータから読み解くと、20~79歳までの平均値は男性で時速約4.5km、女性は時速約4km。これは、ちょっとした散歩や通勤時など、無意識下での歩行速度を調査したものだそうです。
膝に関係の深い、歩く速度と寿命の研究
それでは、歩く速度がどう寿命に関係しているのか、気になる世界の研究結果をご紹介していきましょう。
歩く速度が速い人は死亡リスクが低い
こういったデータはいくつか見受けられます。
早歩きができる人は健康寿命が2倍以上
まずあげられるのが、アメリカの大学が2010年に発表した研究。女性の歩く速度について9年間追跡調査したものです。この研究では「サクセスフルエイジング」というものに注目。これは、がんや認知症などなく健康で生活できるということ。70歳になったときの達成率を評価した研究になります。
結果は、時速3.2km未満で歩く人に比べて、時速3.2~4.8kmの人は1.9倍、時速4.8km以上の人は2.68倍も高いサクセスフルエイジングの達成率が認められました。つまり、健康寿命がそれだけ長いと言い換えることができるのです。
【出典】
「Physical Activity at Midlife in Relation to Successful Survival in Women at Age 70 Years or Older」Arch Intern Med.170(2):194-201,2010
時速3.6km以上で歩く人は長寿
アメリカ・ピッツバーグ大学などの研究チームが2011年に発表した研究では、歩行速度が早い人の方が寿命が長かったというデータが示されています。
65歳以上の男女の通常時の歩行速度を6〜21年間分析したもので、期間中に死亡した17,528人の詳細を見ると、平均的な歩行スピードが秒速0.8m(時速2.88km)だったのに対し、秒速1m(時速3.6km)以上の人たちは寿命が長かったというのです。
【出典】
「Gait Speed and Survival in Older Adult」JAMA.305(1):50-8,2011
ウォーキングすると病気にかかりにくい
では、なぜ歩く速度が速いと寿命が長かったのでしょうか。仮説のひとつとして、私たちの体の中にある防御機能の「免疫」が関係しているかもしれません。
効果的な速さのウォーキングや適度な運動は、がん細胞などを抑え込む重要な免疫細胞「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」を活性化させることが分かっています。例えば、女性の死亡率ナンバーワンの大腸がん。大腸がんは、食生活の欧米化などで近年急激に増えていますが、適度な運動をすることで免疫細胞が活性化し、その発症を5割も減らすことができたという研究結果があるのです。
【出典】
「Exercise induced alterations in NK-cell cytotoxicity – methodological issues and future perspectives.」Exercise Immunology Review 2017, Vol. 23, p66-81.
1日20分の早歩きで死亡リスクが低下
2つの研究は日常の歩行速度、つまり無意識下のときに歩くのが速いと健康に長生きする傾向があるということを指しています。ただ、無意識に歩くと遅いという人もご安心ください! 意識的に歩くスピードを速めることでも、ある効果が期待できるかもしれません。
それは、1日に20分の早歩きをプラスするだけで、早期死亡のリスクを16〜30%も減らせるというもの。イギリスのケンブリッジ大学が研究を元にこういった推測を発表しています。そしてこの結果は、普段あまり運動していない人にこそ、顕著に見られたそうです。
また、前出のピッツバーグ大学の2011年の発表では、歩くスピードが0.1m/秒速くなると、死亡リスクが12%下がるとも言われています。
【出典】
「Physical activity and all-cause mortality across levels of overall and abdominal adiposity in European men and women: the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition Study (EPIC)」American Journal of Clinical Nutrition 2015
膝痛の予防にも早歩きは欠かせない
適度な速度のウォーキングを行うことで、寿命を伸ばす以外にも次のような効果が期待できます。ランニングと違って膝への衝撃が少ない点でも、ウォーキングは膝に優しい運動ですが、その効果は変形性膝関節症の予防や改善に良い影響を与えるものばかりです。
肥満予防
これ目的でウォーキングしている人も多いでしょう。ウォーキングは有酸素運動のひとつですが、有酸素運動のポイントは心拍数を一定にし、体内にたくさんの酸素を取り込むこと。すると高い脂肪燃焼効果が得られるのです。
行動によっても違ってきますが、膝にはかかる負荷は体重の2.5〜3.5倍。そのため、減量は膝へのダメージ減に直結することになりますね。
血流増加
有酸素運動はその名の通り、酸素を消費する運動法。そのため、運動中は酸素を運ぶ血液をたくさん使います。血流が増加するというわけです。
血行不良だと筋肉が拘縮(硬くかたまること)しやすくなり、その影響で膝痛が出たり痛みが増したりすることがあります。つまり、ウォーキングで血流を増加させることは、膝にもとても良いことなのです。
筋力低下を予防
足の筋肉は、膝関節にかかる衝撃を吸収する役目も果たしています。そのため筋力の低下は、変形性膝関節症など膝痛を伴う病気につながりかねません。そういった点でもウォーキングは効果的。筋肉に適度な刺激が加わるため、筋トレのように筋力アップとまではいきませんが、筋力を維持する目的ではとても有効です。
膝痛にも優しい早歩きのコツ
歩行速度は改善できます。最初は意識的な早歩きですが、それが習慣化されると無意識でも歩行速度を速めることも可能でしょう。ただ、やみくもな早歩きは膝への負担となって、逆効果になることも……。次のポイントをおさえつつ、少しずつトライしてみましょう。
ポイント1:ウォーキングフォーム
ウォーキングの基本はフォームです。スピード以前に、正しいフォームで歩くことは長寿以外のウォーキング効果を効率的に得ることにつながります。
そもそも、前屈みに膝を曲げたまま前に出してあるくのが日本人の特徴。このフォームだと、膝や足の筋肉への負担となります。そこで、意識すべきは3点。「目線」「丹田」「膝」です。まっすぐ前を見ること、そして丹田と呼ばれる下腹部中央に少し力を入れることで、背筋をまっすぐに維持。そして、前に出す足の膝をきちんと伸ばすようにしましょう。
ポイント2:歩幅
膝を曲げないであるくことで歩幅が広がります。普通に歩くよりも歩幅をやや広めにしたほうが、速さはもちろん、有酸素運動としての効果も高まります。通常の歩幅は「身長-100cm」くらいと言われていますが、プラス10cmを目安に歩幅を意識してみましょう。
ポイント3:靴選び
歩くことは誰もが行う日常行動ですが、そのわりに靴選びのポイントを知らない人は多いのではないでしょうか。「大は小を兼ねる」と大きめの靴を選んでいるとしたら、これはNG。着地のバランスが崩れるため、正しいフォームが維持しづらく膝への負担も大きくなります。
足長(レングス)はいつもと同じなのに、きついと感じる場合は、足幅(ウイズ)や足囲(ガース)が合っていない可能性大。足のトラブルを持つ人は、レングス以外のサイズも把握した上で靴を選びましょう。できれば、靴選びの認定資格を持つシューフィッターのいるお店で足サイズを計測して選んでもらうことをおすすめします。
速く歩ける膝の状態を保つことがカギ
歩く速度にフォーカスしてお話しましたが、歩ける状態を維持する点で膝の健康なくしては長寿は語れません。そのためにも、
予防したり、進行しないようにリハビリすることがとても大切です。速く歩くためには膝の健康が必要で、それを維持するためには適切なリハビリをする必要があり、続けていると速くも歩ける。つながってないようでいて、すべては関連した事象と言えますね。