ひざ痛チャンネル編集部
2018-09-06

【変形性膝関節症には運動OK】その効果は薬レベルという研究報告も

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【変形性膝関節症には運動OK】その効果は薬レベルという研究報告も

「変形性膝関節症には、運動が効果的」と聞いたことがあるけど、なぜ運動が大事なの? 本当に運動してもいいの? と半信半疑な人も多いのではないでしょうか?

先に答えをお伝えすると、変形性膝関節症の症状改善に、運動はとても有効です。この記事では、それを示す豊富なエビデンス(証拠)を集め、運動療法の効果を証明。さらに、運動についての様々な考え方を交えて、実践すべきトレーニングをピックアップしました。

読み終えたら、きっと運動療法の効果を信じずにはいられなくなっていることでしょう。

 

変形性膝関節症に運動療法は”推奨”されている

運動療法の有用性は、世界変形性関節症学会による診療ガイドラインに明記されています。このガイドラインの中では、変形性膝関節症の診療における見解が数値化されており(最高値は100)、高いほど強く推奨されているということ。日本整形外科学会による診療ガイドラインも同様で、運動療法が効果的であるという見解に、国内外で相違はありません。「変形性膝関節症の治療に運動療法を推奨する」といった意味合いの項目はいずれも高い数値を示し、有用性を明示する形となっています。

運動療法の効果についての見解を数値化したもの。左が世界変形性関節症学会、右が日本整形外科学会の見解。運動療法の有用性は非常に高いと言える。

【出典】川口 浩(独立行政法人地域医療機能推進機構 脊椎脊髄センター)「変形性関節症治療の国内外のガイドライン」

 

運動療法で期待できる好循環の形成

運動療法で期待できる効果とはどういうものか、という部分を具体的にチェックしておきましょう。

変形性膝関節症の症状は様々。その主訴(主要な症状)が、痛みです。膝に痛みを感じると「安静にしなきゃ」という気持ちになり、身体を動かす機会が減ってしまうかもしれません。でも、それはむしろ逆効果。じっとしていることで筋力は低下し、膝への負担が増加。関節軟骨のすり減りが増長され、結果的に膝の痛みが増してしまう……。こんな悪循環に陥ってしまうことも考えられるからです。

変形性膝関節症の悪循環と好循環

変形性膝関節症の悪循環とは、すなわち「痛みの悪循環」とも言えるでしょう。先にお話ししたように、それを断ち切る手段として有効であると推奨されているのが、運動療法なのです。運動によって痛みが緩和され、好循環が生まれる要因としては、次のようなことが挙げられます。

 

膝関節への負担が軽減される

膝へかかる負担を吸収するクッションのような役割を果たすのが、膝周りの筋肉。運動することでここに筋力がつけば、膝関節への負担の軽減、ひいては痛みの緩和にも繋がり、好循環の形成が期待できるというわけです。

  • 関連する筋肉……大腿四頭筋など

 

膝関節が安定する

膝関節の前後・左右の安定感を高めることも、好循環を作るために欠かせません。膝が安定していないと、歩行時にぐらついたり、スターティングペインという歩き始めの痛みが起きたりしやすくなるからです。また、膝関節が不安定なのは骨盤の歪みが原因となっていることがあります。骨盤が歪んだ状態が続くとO脚やX脚を進行させ、変形性膝関節症の悪化を招く可能性も……。こうしたことを防ぐため、膝関節や骨盤の安定性を司る筋肉にアプローチする運動が必要なのです。

  • 関連する筋肉……内転筋群、臀筋群など

 

膝の可動域が広がる

可動域とは、問題なく動かせる範囲や角度のこと。変形性膝関節症になると、徐々に膝の可動域が制限され、日常生活に支障が出てしまいます。というのも、膝がまっすぐ伸びた状態を0度とした場合、歩行のためには60度、しゃがむためには100度、正座のためには150度まで膝が曲がる必要があるからです。悪循環を断ち切って好循環を作るには、膝の可動域を正常に保つことが大切になります。

 

運動で変形性膝関節症の症状が改善した実例

変形性膝関節症の運動療法

運動療法の有用性は診療ガイドラインにも記述があり、好循環の形成が重要……と聞いても「本当に効果はあるの?」と半信半疑の方もいるでしょう。そんな方のために、運動が変形性膝関節症の症状改善に効果をもたらすという、エビデンスや事例をお話します。

 

薬物療法・理学療法に運動療法の併用で症状が改善

イランの大学が、変形性膝関節症の患者56人を2つのグループに分けて行った研究があります。

一つのグループは、薬物療法(鎮痛薬の服用)と理学療法(鍼治療)に加えて運動療法を実施。もう一方のグループは運動療法を行わず、薬物療法と理学療法のみ行いました。

治療開始から1か月後、3か月後、12か月後にこれらのグループを調査すると、運動を追加したグループは、時間の経過とともに膝の痛みが大幅に緩和していったと言います。それだけでなく、歩行や階段昇降、起立動作における機能障害の改善も確認されました。

この論文では「重度の変形性膝関節症であっても、運動療法は推奨される」と結論づけられています。

【出典】Parisa Nejati, Med J Islam Repub Iran. 2015; 29: 186. Published online 2015 Feb 25. 「The effect of exercise therapy on knee osteoarthritis: a randomized clinical trial」

 

運動療法には鎮痛薬と同等レベルの効果が

変形性膝関節症の症状緩和に運動が有効であるという事実に加え、期待できる効果は「痛み止め(NSAIDs:非ステロイド系抗炎症薬)に匹敵するレベル」と述べる論文も。つまり、ロキソニンやボルタレンといった薬剤の服用と同等の鎮痛効果が、運動によって得られる可能性があるというわけです。薬の長期服用は副作用が気になる、という人もいるかもしれませんが、運動の継続であればその点は安心ですね。

【出典】Fransen M, Cochrane Database Syst Rev. 2008 Oct 8;(4):CD004376. doi: 10.1002/14651858.CD004376.pub2. 「Exercise for osteoarthritis of the knee.」

 

運動継続3か月で杖が不要になった例

以前に当院のスタッフが治療に携わった、70代の女性のお話です。膝の痛みや機能障害などから、当初は杖をつかなければ歩行が困難な状態でした。しかし、運動して膝周辺の筋力をつけることの重要性を知り、トレーニングを3か月継続。その結果、杖をつかなくても歩けるほどになったのです。患者さまが頑張った結果ではありますが、いかに運動療法が重要か分かる実例ですね。

 

運動が逆効果になることはないの?

膝に良くない間違ったトレーニングはNG

運動療法の有用性や実例を知っても、不安として残るのが「逆に膝を痛めてしまわないか」ということではないでしょうか。間違った方法で運動してしまったり、膝の状態に合わない過度な運動をしてしまったりすれば、もちろん逆効果となり得ます。ですから、正しい知識を持って実践することが最低条件。具体的な運動方法をご紹介する前に、運動についての考え方をお伝えします。

 

運動の考え方「OKC」と「CKC」

運動には、OKCとCKCという二つの考え方があります。いずれも、変形性膝関節症に対する運動療法として効果的。ただし、方法や目的は少しずつ異なります。それぞれを正しく知って使い分けるのがよいでしょう。

 

トレーニングの導入段階に適した運動「OKC」

OKC(Open Kinetic Chain)は、開放性運動連鎖という意味で、手先や足先といった身体の末端が自由な状態で行う運動のこと。日常生活とは異なる動作を含む運動が多く、トレーニングの導入段階でしばしば用いられます。立位が難しい人や、負荷を抑えめにしたい人に向いているトレーニングです。変形性膝関節症の方がセルフケアとして運動を行う場合、基本的にはこちらをおすすめします。

 

日常生活の動作に近い運動「CKC」

CKC(Closed Kinetic Chain)は、閉鎖性運動連鎖と言います。これはOKCと対照的に、身体の末端が自由ではない状態で行うトレーニングのこと。腕立て伏せやスクワットが代表的です。日常生活の動作に近いものは、OKCよりもCKCに多いと言われています。CKCでかかる負荷がOKCよりもやや大きいことから、先にOKCを行い、慣れてきた頃にCKCへ移行するケースが多いでしょう。

 

変形性膝関節症におすすめの運動

いよいよ、運動を実践してみましょう。OKCが基本ですが、先ほどお話ししたCKCも併せてご紹介しています。

 

膝への負担を減らす運動① 大腿四頭筋トレーニング

膝関節にかかる負担を減らすには、大腿四頭筋という太もも前側の筋肉を鍛えましょう。大腿四頭筋には、膝の前後の安定感を高める働きもあるため、非常に重要度の高い筋肉です。

①トレーニングする足を伸ばして床に座ります。
②コンパクトに丸めたバスタオルを、伸ばした足の膝より少し上(太もも下)に敷きます。膝が伸びきらない人は、膝より少し下のふくらはぎあたりに敷きましょう。
③つま先を天井に向けて立て、タオルをつぶすように膝を伸ばします。このとき、太もも前面の内側部分(内側広筋)に力を入れるよう意識するのがポイントです。
④この状態で5~10秒キープ。連続して5~10回、1日3セットを目標に行います。

 

膝への負担を減らす運動② 大腿四頭筋のCKCトレーニング

変形性膝関節症に対するCKC運動の効果を示す論文で提唱されている、大腿四頭筋のトレーニングです。膝関節への負担を自分でコントロールできるため、CKCの中でも実践しやすいでしょう。

入浴中にできるこの運動は、バスタブに浸かる習慣のある日本人に向いていますね。膝を温めることで血行が良くなり、痛みの改善が期待できるという点でも、優れた方法です。

ただし、OKCより負担は大きめなので、必ず注意点を守って行うようにしてくださいね。

変形性膝関節症に効果的なCKC運動

①バスタブの前方の壁に、両足の裏を当てます。
②壁からの反発力が膝関節と股関節に均等に伝わるよう、リズムよく蹴りの動作を行いましょう。
③膝に痛みが出ない強さでゆっくり、30 回ほどが目安です。

【このトレーニングを行う上での注意点】
・内側型の変形性膝関節症(O脚)の人は、足を開かないようにし、膝を曲げる角度は40度(図中の★の角度)以下にとどめる
・外側型の変形性膝関節症(X脚)の方は、足が閉じないようにする
・バスタブの大きさと身長が合わない場合などは、無理にトレーニングをしない

【出典・引用】
河村顕治(第 47 回 日本リハビリテーション医学会 学術集会)「変形性膝関節症における温熱と CKC 運動の効果」

 

膝関節を安定させる運動① 臀筋群トレーニング

臀筋群(でんきんぐん)とは、骨盤を支えるお尻の筋肉。大臀筋(だいでんきん)、中臀筋(ちゅうでんきん)、小臀筋(しょうでんきん)という3つから成ります。下半身のアライメント(骨や関節の配列)を整えるのに重要な筋肉のため、ここが弱いと下半身のアライメントが崩れ、膝関節も不安定に。また、座った状態からお尻を持ち上げるのを助ける動きもあるため、鍛えて楽にお尻を持ち上げられるようになれば、そのぶん膝への負担も軽減されるでしょう。

①鍛える方の足を上にして、横向きに寝そべります。
②骨盤がまっすぐ立ったまま動かないように、体勢を整えます。
③上の足の膝を伸ばしたまま、できる範囲で足をゆっくりと上げ下げします。
④こちらも5~10回の1日3セットを目標にしましょう。

 

膝関節を安定させる運動② 内転筋群トレーニング

太ももの内側にあるのが内転筋群(ないてんきんぐん)。これは、大内転筋(だいないてんきん)、長内転筋(ちょうないてんきん)、短内転筋(たんないてんきん)、薄筋(はっきん)、恥骨筋(ちこつきん)の総称です。

歩行時にヨタヨタと不安定になるトレンデレンブルグ歩行や、膝が外側にぶれるラテラルスラスト現象は、内転筋群が弱っている人に起こりやすい特徴。これらは臀筋群が弱い場合も同様に起こるため、内転筋群と臀筋群を合わせて鍛え、骨盤から膝関節にかけて安定させるのが理想的です。

①横向きに寝そべり、下の足を伸ばします。上の足は膝を曲げた体勢からスタート。
②下で伸ばした足をゆっくりあげていきます。最初は10cmくらいで構いません。
③このとき、上半身の姿勢が崩れたり、上げた足の膝が曲がらないよう注意しましょう。
④3秒かけて足をあげ、3秒かけて下ろす運動を10回。1日3セットが目安です。

 

膝の可動域を広げる運動 膝の引き寄せトレーニング

先にお話したように、直立時の膝の角度を0度とすると、歩行のためには60度、しゃがむためには100度、正座するためには150度、膝が曲がる必要があります。変形性膝関節症になるとこの可動域は徐々に狭くなるため、それを防ぐトレーニングが必要というわけです。

①仰向けに寝そべった状態で行います。
②片方の膝を曲げつつ、上半身の方へ持ち上げます。
③バスタオルをすねに掛け、かかとをお尻につけるように引き寄せましょう。
④無理のないところで5秒キープする運動を、連続で5~10回。1日3セット行います。
※バスタオルがなくてもできる人は、両手で足のすねを持って行いましょう。

 

変形性膝関節症の運動は正しく行ってこそ効果アリ

いかがでしたか? 痛みを始めとする変形性膝関節症の症状を改善するのに、運動が非常に効果的であるとお分かりいただけたのではないでしょうか。ここでご紹介した知識も大いに活用して、好循環をつくるための運動をぜひ実践していただきたいと思います。

ただ、症状や膝の状態によっては、向かない運動もあるかもしれません。心配なときや痛みが強いときは、まず医師や理学療法士の指導を受けてから運動を行ってくださいね。望んだ効果を得るためには、自分に合った正しい方法で運動するのがベストですから。

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