ひざ痛チャンネル編集部
2018-06-22

医師が語る、膝のけがの治療法と悪化させない最善策〜障害編〜

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医師が語る、膝のけがの治療法と悪化させない最善策〜障害編〜

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「スポーツや仕事で膝を使っているうちに、少しずつ痛み始めた」とか、お子さまが膝の痛みを訴えている、といったことはありませんか? 「膝のけが【外傷トップ5】応急処置や治療法を専門医が解説」では、受診を急ぐべき膝のけがをご紹介しましたが、今回は「使いすぎ症候群」とも言われている膝の「障害」についてクローズアップ。膝が痛むのは不安かもしれませんが、安静にしつつ今回お話するような適切な処置を施せば、症状の悪化予防や改善は可能です。

そのためには、まず膝に起こる障害にはどんな種類があるのかを知っておく必要があるでしょう。この記事では、膝の障害を引き起こす共通の原因と、症状緩和のための正しいセルフケア方法も動画でご紹介! 膝のけが治療・予防にぜひ役立ててください。

 

膝に起こるけが「障害」と「外傷」の違い

治療が効かない理由

前回の記事「外傷編」でもご紹介しましたが、膝のけがには「障害」と「外傷」があります。この記事では障害を取り上げますが、まずはこれらの違いを知っておく必要があるでしょう。

 

膝の障害

膝にかかる継続的な負荷が蓄積されることで生じたけがのことです。スポーツでの動作が影響して発症したものは「スポーツ障害」と言われます。

膝の外傷

ぶつかった、捻ったなど、身体の外から力が加わることで生じたけがのことです。スポーツ中に受傷したものは「スポーツ外傷」と呼ばれます。

 

膝のけが「障害」にはどんな種類がある?

では、膝に起きるけがの「障害」にはどんなものがあるのか、見ていきましょう。

 

①膝の内側が痛い「鵞足炎」

鵞足炎とは

膝の内側には、縫工筋、半腱様筋、薄筋という3種類の太ももの筋肉と、すねの脛骨(けいこつ)をつなぐ腱が集まっています。この部位の形が鵞鳥(ガチョウ)の足の形とよく似ていることから、鵞足(がそく)と呼ばれるようになりました。

膝の曲げ伸ばしを始めとする動きに伴って鵞足と脛骨との間に摩擦が生じ、炎症を起こすのが鵞足炎。これによって膝の内側から、その少し下あたりに痛みが出るようになるのです。

鵞足炎は、X脚の人に発症する可能性が高いと言われています。X脚は重心が膝関節の外側にかかり、内側は張った状態になっているため、鵞足が脛骨と擦れやすくなっているのです。鵞足炎の症状としては、次のようなものが挙げられます。

  • 曲げ伸ばしに伴う、膝の内側の痛み
  • 膝の内側を押すと痛い
  • 膝に腫れや熱感が見られる

 

②膝の外側が痛い「腸脛靭帯炎」

腸脛靭帯炎(ランナー膝)

腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)とは、太ももから脛(すね)上部までの外側にある靭帯で、太ももの筋肉である大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)が、途中から移行したもの。

ランニングや自転車などで膝を曲げ伸ばす動作では、大腿骨外側上顆(だいたいこつがいそくじょうか:膝の外側にある骨の出っ張り)の上を、腸脛靭帯が前後に動きます。このとき骨と靭帯が摩擦することで、部分的に炎症を起こしてしまった状態が腸脛靭帯炎です。主に下記のような症状が現れます。

  • 膝の曲げ伸ばしに伴う膝の外側の痛み
  • 膝の外側に圧痛がある(押すと痛む)

 

③膝下が痛い「膝蓋靭帯炎(膝蓋腱炎)」

ジャンパー膝

膝蓋靭帯(しつがいじんたい)とは、膝のお皿である膝蓋骨(しつがいこつ)と脛骨を結ぶ靭帯で、膝の曲げ伸ばしに伴い伸びたり戻ったりします。そのときの負荷が蓄積されることで膝蓋靭帯に炎症が起きるのが、膝蓋靭帯炎。別名は「ジャンパー膝」で、バレーボールやバスケットボールなどのスポーツでジャンプを繰り返す人に多いため、そう呼ばれるようになりました。また、小さなジャンプ動作を繰り返すランニングで発症するケースもあるでしょう。この障害は、10〜20代の男性に多いのが特徴で、次のような症状が多く見られます。

  • 膝を曲げると膝下に痛みが出る
  • 運動中と運動後、膝下に痛みが出る
  • 膝下が腫れたり、熱を持ったりすることがある

また、ジャンパー膝には、膝上に症状が出る大腿四頭筋腱炎(だいたいしとうきんけんえん)もあります。大腿四頭筋腱は、膝蓋骨と太ももの大腿四頭筋をつなぐ腱のことです。この疾患の治療について、より詳しくは【治らなくなる前に】ジャンパー膝の対処法・治療法を紹介します!にまとめてあります。

 

④膝で音が鳴る「タナ障害」

タナ障害

出典:tulesion.com

膝関節の周りには関節包(かんせつほう)という袋のようなものがあり、膝関節を守る役割を果たしています。その関節包についているヒダ状の組織が、滑膜ヒダ(かつまくひだ)。滑膜ヒダはいくつかありますが、膝の内側にあるものこそ、タナ(棚)の正体です。関節内視鏡で見ると棚のように見えることから、そう呼ばれるようになりました。

タナは出生時に半分の人から消失しますが、それが残存している人に起こり得るのが、タナ障害。スポーツなどで膝の曲げ伸ばしが繰り返されたとき、タナが膝蓋骨と大腿骨の間に挟まり、擦れて炎症を起こすのです。膝の内側に下記のような症状が現れやすくなります。

  • 膝蓋骨周辺の痛み
  • 膝から「カチッ」や「コリッ」と音が鳴る
  • 膝を曲げ伸ばしたときに引っかかるような違和感がある

 

⑤子どもに多い膝下の痛み「オスグッド病」

オスグッド病とは

正式名称は、オスグッド・シュラッター病。10~15歳の子供に起こりやすいため「成長痛」と思われがちですが、実はそうではありません。レントゲン検査をすれば異常が確認できます。

オスグッド病は、膝下の膝蓋靭帯と脛骨の結節部(結ばれた部分)が剥離(はくり)する障害。激しい運動を継続することで膝蓋靭帯から脛骨にかかる負荷が増えると、脛骨との結節部が強く引っ張られ、軟骨ごと剥がれてしまうのです。10〜15歳の子供に多いのは、脛骨が軟骨から硬い骨へと成長している最中で、まだ大きな負荷に耐える準備ができていない状態だから。多くは成長とともに自然治癒しますが、剥離した骨の影響で、大人になっても痛みが続くことがあります。オスグッド病は次のような症状が特徴的です。

  • 膝のお皿の下に痛みが出る
  • 膝のお皿の下が硬く盛り上がる

 

膝のけが「障害」の原因は?

膝の障害の原因

膝に起きる「障害」を引き起こすものは何なのでしょうか? ここまでご紹介した5つの障害に共通する原因としては、次のようなものが考えられます。

 

オーバーユース

オーバーユースとは、筋肉や靭帯を使いすぎることで特定の部位に負荷がかかり続け、痛みや違和感といった不調が現れるもの。別名を使いすぎ症候群とも言います。膝では、ジャンプやランニングといった動作を繰り返すことによって生じるものが多いでしょう。

 

マルユース(誤使用)

誤った身体の使い方をしてしまうことをマルユースと言います。筋力は十分でも、マルユースを繰り返すことで膝にかかる負担が増え、膝の障害を引き起こしてしまう可能性があります。

 

筋肉が硬い

筋肉をまとめる筋膜(きんまく)が癒着していたり、筋肉の線維が短かったりすると、筋肉は硬くなります。筋膜は水とコラーゲンで構成されていますが、身体を動かさないことでコラーゲンが結合し、それぞれの筋膜がくっついてしまうのです。そうなれば筋膜は伸展性を失い、いわゆる「硬い」という状態に。これは、筋肉が常に収縮しているのと同じこと。身体のバランスが乱れて歪みも生じるため、誤った身体の使い方をしてしまうマルユースを誘発する要因にもなります。

 

筋力不足

足の筋肉には、膝へかかる負担をカバーしてくれる役割があります。つまり筋肉が足りていなければ、そのぶん膝への負担が増えるということ。成長途中で筋力が十分についていない子供は、膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)や腸脛靭帯炎(ランナー膝)、オスグッド病など、特に膝を痛めやすい状況にあると言えるでしょう。

 

膝のけが「障害」に効果的なストレッチ

膝の障害に対するストレッチ

膝の障害は、オーバーユース(使いすぎ)や筋力不足であることが多いため、発症してしまったら、まずは安静にしましょう。でも、何もせずじっとしているのは逆にNG! 膝周辺の筋肉をほぐし血行を良くすることで、障害からの早期回復にもつながります。次にご紹介するようなストレッチを取り入れてみてください。

 

鵞足炎には鵞足筋のストレッチ

縫工筋・半腱様筋・薄筋を合わせた鵞足筋の柔軟性を高めることで、鵞足炎の症状緩和、予防が期待できます。

①ストレッチする足を45度広げ、反対の足の膝を内側に曲げます。

②股関節を折り曲げるように背筋を伸ばしたまま前に倒れていきます。

※膝から太ももの内側が伸びているのが実感できたらOKです。背中が丸まったり、伸ばした足が内側に倒れてしまわないように注意してください。

 

腸脛靭帯炎には大腿筋膜張筋のストレッチ

太もも上部の外側にある大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)が硬くなると、そこから移行している腸脛靭帯が過度に引っ張られ、腸脛靭帯炎を発症しやすくなります。大腿筋膜張筋をほぐすことが、腸脛靭帯炎の症状緩和と予防に効果的です。

①ストレッチする足の裏にタオルを掛けます。

②その足と反対の手でタオルを持ち、手のほうへゆっくり足を倒していきます。

③足を頭の方にタオルで引き寄せます。このとき、お尻から太ももの外側が伸びていることを意識しましょう。

※膝が曲がったり背中が浮いたりしないようにしましょう。タオルを持たない手を外に広げ、顔もそちら側へ向けると、背中が浮きにくくなります。

 

膝蓋靭帯炎・タナ障害・オスグッド病には大腿四頭筋のストレッチ

膝の屈伸運動にかかわる筋肉が、膝蓋靭帯炎やタナ障害、オスグッド病への対処・予防に効果的。その筋肉が、太もも前側の大腿四頭筋です。

①座った状態で、片足の膝を外に折り畳むように曲げます。膝を曲げた側のお尻が床から浮かないようにしましょう。

②体を後ろに少し傾け、両手をつきます。腰が反らないように気をつけてください。

③太もも前面が伸びてることを感じたところで、20〜40秒キープ。

④可能な人は体をもっと倒す、もしくは床に仰向けになるとより効果的です。

 

膝のけが「障害」は、入念なケアで対処・予防!

膝の障害は日頃のケアで予防・対処もし膝の障害を発症してしまっても、大慌てする必要はありません。まずは安静にしつつ適切な治療を行えば、きっと改善に向かうのが膝の障害。靭帯の損傷や骨折といった外傷とは異なり、一度の外力で受傷するものではないため、予防も十分可能なのです。

膝の障害を引き起こす原因となるオーバーユースに関して、バレーボール界からこんな興味深い発言が。それは、18歳という若さでバレーボール全日本男子代表として活躍する、西田有志選手について。ポーランド代表のヘイネン監督が「彼は常に高くジャンプし、身体を酷使しています。18歳と非常に若いこともあり、フィジカル面が心配ですね。私なら、15試合のうち半分も彼を出さないと思います。彼が22歳、23歳になったときが重要なので、今はとにかく身体のケアを中心に行ってほしいです」と心配していました。

ここでは18歳の西田選手を例に挙げましたが、身体のケアは何歳であっても同じ。日常的にスポーツをしている方も力仕事をしている方も、日頃のケアを欠かさず、少しでも違和感を感じたら無理をしないようにしてください。

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